「できない人」が出ないレクリエーションの作り方|認知・身体差に配慮した設計法
「簡単なレクリエーションを選んだつもりなのに、一部の利用者しか参加してくれない」
「レクを始めると、できる人とできない人に分かれてしまう」
高齢者向けのレクリエーションでは、利用者によって認知機能や身体機能、これまでの経験、興味のあることなどに違いがあります。同じ場にいるからといって、全員が同じことを同じ方法でできるとは限りません。
そこで考えたいのが、全員に同じことを求めるのではなく、一人ひとりに合った参加方法を用意することです。
この記事では、レクリエーションに「できない人」が出てしまう理由を整理しながら、企画するときの工夫や具体的な実践例、認知症のある方への配慮や、レクリエーション以外の関わり方についても紹介します。

なぜ「できない人」が出てしまう?レクリエーションで参加を難しくする要因

介護施設のレクリエーションでは、「全員で同じことをする」ことが前提になっているケースも少なくありません。
しかし、利用者の状態や好みはさまざまです。
「できる人」と「できない人」が分かれてしまう背景には、いくつかの理由があります。
認知機能の違い
レクリエーションの内容によっては、ルールを理解したり、記憶したり、判断したりする力が求められます。
一度に複数の説明を聞いて理解することが難しい方の場合、内容は簡単でも、参加するまでのハードルが高くなってしまうことがあります。
こうした場合、レクリエーションそのものが難しいというより、説明の仕方や進め方が本人に合っていない可能性もあります。
言葉だけでは伝わりにくいときは、
- 実際にやって見せる
- 説明を一つずつ区切る
- 見本を手元に置く
など、少し工夫するだけでも、取り組みやすさは変わってきます。
身体機能の違い
身体を動かすレクリエーションでは、身体機能の違いも参加しやすさに影響します。
手先を細かく動かすことが難しい、腕を高く上げられない、長時間座っていると疲れてしまうなど、困りごとは人によってさまざまです。
さらに、視力や聴力の違いによって、説明や道具が見えにくい、聞き取りにくい可能性もあります。
身体を動かせるかどうかだけでなく、どのような姿勢なら参加しやすいか、どの程度の大きさや速さなら取り組めるかまで考える必要があります。
経験や好みの違い
認知機能や身体機能に問題がなくても、レクリエーションへの関心が高いとは限りません。
昔から手芸が好きだった方なら、工作の時間を楽しみにする一方で、細かな作業よりも歌や会話が好きな方もいます。
クイズが好きな方もいれば、人前で答えることが苦手な方もいるでしょう。
同じレクでも、「やってみたい」と思うかどうかには個人差があります。
参加者の反応を見ながら、普段の会話や生活歴からヒントを探してみると、企画の幅が広がります。
「できる・できない」で参加を判断してしまう
レクリエーションでは、完成させる、正解する、決められた動作をするなど、目に見える結果に注目しがちです。
- 最後まで完成させる
- 正解する
- 決められた動きをする
このようなことが参加の条件になっていると、最後までこなせなかった人や、周囲と同じように動けなかった人を「参加が難しかった人」と捉えてしまうことがあります。
けれども、本人は周囲の様子を眺めたり、職員の話を聞いたりする時間を楽しんでいるかもしれません。
レクリエーションの目的は、全員が同じ成果を出すことだけではありません。人との交流や気分転換、その人らしい時間につながっているかにも目を向けたいところです。
「誰もが参加しやすいレク」は、内容よりも設計がポイント

誰でも参加できるレクを企画するとき、まずレクの難易度を下げようと考えるでしょう。
もちろん、難しすぎる内容を見直すことは大切です。
ただし、すべての人に合わせて内容を簡単にしてしまうと、今度は物足りなく感じる方が出てくることもあります。
そこで考えたいのが、同じレクの中に複数の参加方法をつくることです。
レクを「一つの課題」として考えない
レクリエーションを企画するときは、一つの活動を複数の工程に分けて考えることがポイントです。
例えば、季節の飾りづくりなら、
- 色を選ぶ
- パーツを探す
- パーツを切る
- のりをつける
- 貼り付ける
- 全体を組み合わせる
など、いくつもの工程に分けることができます。
まずは活動を細かな工程に分け、どのような作業が含まれているのかを整理することが大切です。
「できる・できない」の間に段階をつくる
レクを工程ごとに分けたら、次はそれぞれの作業について、参加する人に合わせて方法や難易度を調整します。同じ作業でも、やり方を変えれば参加できる場合があります。
たとえば、ボールを投げることが難しくても、持つことならできる場合があります。持つことも難しい場合は、職員と一緒にボールを動かしたり、次に渡す人を知らせたりする役割を用意する方法もあります。
このように、作業そのものをなくすのではなく、取り組み方や難易度を調整することで、一人ひとりに合った参加方法を見つけやすくなります。
「できるか、できないか」の二択で判断するのではなく、どのような方法なら参加できるかを考えることが、無理なく楽しめるレクにつながります。
「参加=最後まで自分でやる」ではない
レクリエーションへの参加は、最初から最後まで一人で取り組むことだけではありません。例えば、次のような関わり方もあります。
- 一部だけ取り組む
- 誰かと一緒に行う
- 見て楽しむ
- 声をかける
- 応援する
- 好きなものを選ぶ
こうした関わり方も、参加する方法の一つとして考えられます。
「できないから参加できない」のではなく、できる形に変えて参加するという発想が、レクリエーションを組み立てるうえで重要になります。

誰でも参加しやすくなる3つの設計法

ここからは、実際にレクリエーションを考えるときに取り入れやすい3つの方法を紹介します。
方法① 「段階化」する
一つ目は、レクの工程や難易度を分ける方法です。
たとえば、季節に合わせた壁面飾りを作るレクを想定してみましょう。
一つの作品を全員で作る場合でも、次のように段階をつくることができます。
レベル1:好きな色を選ぶ
いくつかの色の画用紙やパーツを用意し、「どれが好きですか?」と選んでもらいます。
レベル2:パーツを貼る
あらかじめ切っておいたパーツを、決められた場所に貼ってもらいます。
レベル3:パーツを切る・組み合わせる
手先を使った細かな作業ができる方には、自分でパーツを切ったり、組み合わせたりしてもらいます。
この方法なら、同じ「季節の飾りづくり」に参加しながら、取り組む内容は一人ひとり変えられます。
「簡単なことしか用意しない」のではなく、同じレクの中にいくつかの入り口をつくるイメージです。
また、途中で「ここまでやってみる」という区切りをつくっておけば、その日の体調に合わせて終了することもできます。
方法② 「役割分担」する
二つ目は、一人ですべてを完成させる必要がないようにする方法です。
ボールを隣の人へ渡していくレクリエーションを行うとします。
「ボールを持って、次の人へ渡す」という動作だけにすると、身体機能によって参加しにくい方が出るかもしれません。
そこで、役割をいくつか用意します。
- ボールを渡す
- 数を数える
- 順番を知らせる
- 「がんばって」と声をかける
- 周りを見ながら応援する
このようにすると、身体を大きく動かすことが難しい方も、別の役割で関われます。
もちろん、本人がどの役割を希望するかは、その日の状態や気持ちによって変わります。
「今日は応援するだけ」「今日は数えるだけ」という選択があってもよいでしょう。
レクを一人で完結させるのではなく、みんなで一つのものを作る形にすると、参加の方法を増やしやすくなります。
方法③ 「選択式」にする
三つ目は、「正解する」よりも「自分で選ぶ」場面を取り入れる方法です。
- 2つの色から好きな方を選ぶ
- いくつかの写真から好きなものを選ぶ
- 2種類の道具から使いたいものを選ぶ
- 「やる・見る」を本人に選んでもらう
といった方法があります。
すべてを自分で判断する必要があると負担が大きくなる方でも、選択肢を絞れば、自分で選びやすくなることがあります。
「何色がいいですか?」とたくさんの色を見せるより、「赤と青ならどちらが好きですか?」と聞くほうが答えやすい場合があります。
ただし、選択肢を用意すれば必ず答えられるとは限りません。
その日の体調や気分によっては、選ぶこと自体が負担になることもあります。
大切なのは、「自分で選べる場面」を用意しつつ、選ばないことも受け入れられるようにしておくことです。

実践例|同じレクでも「参加の仕方」を変えてみる

ここまで紹介した考え方を、実際のレクに当てはめてみましょう。
例① クイズ・脳トレ
クイズや脳トレは、レクリエーションの定番です。
一方で、「問題を聞いて、答えを考え、言葉にして答える」という流れが必要になるため、人によっては参加のハードルが高くなります。
- 問題を聞いて理解する
- 答えを思い出す
- 正解を考える
- 人前で答える
- 2択から選ぶ
「春の花はどちらでしょう?」など、2つの選択肢から選んでもらいます。 - 指差しで答える
声に出して答えることが難しい場合は、答えを指差してもらう方法もあります。 - 答える人と問題を読む人を分ける
答えることだけでなく、「問題を読む」「カードを持つ」といった役割をつくることもできます。
また、クイズでは「正解した人が勝ち」という形だけにしないことも一つの方法です。
昔の写真を見ながら、「これ懐かしいね」「昔はこうだったね」と会話が生まれるだけでも、その時間を楽しめます。
例② 工作・手芸
工作や手芸は、完成した作品を持ち帰ったり、施設内に飾ったりできる楽しさがあります。
その一方で、切る、貼る、折る、描くなど、複数の細かな作業が必要になることがあります。
- はさみを使う
- 細かいパーツを扱う
- 作業手順を覚える
- 力加減を調整する
- パーツはあらかじめ準備しておく
材料を順番に並べておくと、次に何をすればよいかが分かりやすくなり、作業を進めやすくなります。 - 選ぶ・貼るだけでも参加できるようにする
「どれを使いますか?」「ここに貼ってみますか?」といった形で、選ぶ・貼るといった作業を中心にしてもらうこともできます。 - 他の人と分担する
「このパーツはAさん」「こちらはBさん」と役割を分ければ、それぞれの得意な作業を生かせます。
また、一人で作品を完成させるのではなく、全員で一つの大きな作品を作る方法もあります。作業を分担することで、一人では完成させることが難しい方も参加しやすくなります。
例③ 身体を動かすレク
体操やボールを使ったゲームなど、身体を動かすレクでは、動作の大きさやスピードに差が出やすくなります。
- 大きな動作が必要
- 立って行う必要がある
- 動きを覚えて合わせる必要がある
- スピードについていく必要がある
- 座ったままでも参加できるようにする
- 動作を小さくしても楽しめるルールにする
- 「動く」以外に「掛け声」「合図を出す」などの役割を用意する
認知症のある方が参加するレクで意識したいこと

認知症のある方が参加するレクリエーションでは、内容だけでなく、説明の仕方や進行のペースにも目を向けましょう。
認知機能の状態には個人差があり、同じ診断名であっても、できることや得意なことは異なります。
そのうえで、レクを組み立てる際には、次のような点を意識してみましょう。
ルールはできるだけシンプルにする
複雑なルールを一度に説明すると、内容を理解することが負担になる場合があります。
「まずこれをします」と、一つの動作から始める方法があります。
慣れてきたら、次の動作を追加するなど、進め方を調整してみましょう。
一度にたくさん説明しない
「このカードを取って、右に置いて、そのあと隣の人に渡してください」と複数の指示を一度に出すより、
「まずカードを取ります」「次にここへ置きます」と、一つずつ伝えるほうが分かりやすい場合があります。
言葉だけでなく、見本を見せる
認知症のある方の中には、言葉による説明だけでは、作業の内容や手順を理解しにくい方もいます。口頭での説明に加えて、実際にやって見せることも理解を助ける方法の一つです。
- 工作は完成品を見せる
- ゲームはスタッフが一度やってみる
- 体操は一緒に動いてみる
正解・失敗を強く意識させない
クイズやゲームでは、正解を出すことが楽しみになる人もいます。一方で、「間違えたらどうしよう」と感じると、参加すること自体をためらってしまう方もいます。
「惜しいですね」と声をかけるだけでなく、「そう思ったんですね」「昔はどうでしたか?」など、本人の言葉をきっかけに会話を広げることもできます。
もちろん、正解を目指すこと自体が悪いわけではありません。参加者の反応を見ながら、勝ち負けや正誤を楽しむ内容にするのか、会話や思い出を引き出す内容にするのかを考えましょう。
本人のペースを尊重する
周囲の人が次の工程に進んでいても、すぐに同じペースで進められるとは限りません。
作業に時間がかかっているときは、急かすのではなく、必要に応じて手順を確認したり、道具の位置を整えたりしてみましょう。反対に、作業への関心が薄れている様子なら、別の作業を提案することもできます。
その日の体調や気分によって、普段はできることが難しくなる場合もあります。
いつもと違う様子が見られたときは、無理に続けず、休憩や見学に切り替えることも検討しましょう。
「全員参加」にこだわりすぎないことも大切
ここまで「誰でも参加しやすいレク」の工夫を紹介してきましたが、必ずしも全員が同じように参加する必要はありません。
レクリエーションの時間に、少し離れたところから様子を見ている方や、途中から参加する方、途中でやめる方もいます。
「参加していない」とだけ捉えてしまうと、本人の楽しみ方を見落としてしまう可能性があります。
その日の体調や気分によって、レクに参加したくないこともあるため、全員を参加させることよりも、それぞれが無理なく関われる状態をつくることを目指してみるとよいでしょう。
それぞれが心地よく過ごせる関わり方を探していく。
そんな視点が、無理のないレクリエーションづくりにつながります。
レクリエーション以外にもある、介護の「参加」のきっかけ

もし「最初から最後まで一人で完成させる」ことを前提にすると、どこか一つの作業が難しいだけで、活動全体に参加しづらくなります。
利用者さまが人と関わり、楽しみを感じるきっかけは、レクリエーションの時間だけに限りません。
- 自分で選ぶ
- 人と会話する
- 誰かに触れてもらう
- 身だしなみを整える
- 好きなものを見つける
こうした日常の小さな行動も、人とのつながりや楽しみにつながります。
レクリエーションの時間だけでなく、日々のさまざまな場面に「参加するきっかけ」はあります。
「美容」も一つのきっかけになる
メイクやネイル、ハンドケア、髪を整えることなど、美容に関する時間も、人と関わるきっかけの一つです。
- 口紅の色を選んでもらう
- ハンドケアをしながら昔話をする
- 髪を整えたあとに鏡を見てもらい感想を聞く
「何をするか」だけでなく「どう関わるか」がポイントになります。
「今日はどの色にしますか?」
「この色が好きですか?」
「どちらのデザインが好みですか?」
このような会話から、その人の好みやこれまでの経験について話が広がることもあります。
美容そのものを楽しむだけでなく、美容をきっかけに人と話す、選ぶ、誰かに見てもらうといった時間が生まれることもあります。
介護美容という選択肢
介護美容は、高齢者や介護を必要とする方に向けて、美容を通じたケアやコミュニケーションを届ける取り組みです。
ネイルやハンドケアなどを通じて身だしなみを整えたり、会話を楽しんだり、自分らしさを感じたりする時間を支えます。
レクとは目的や関わり方が異なりますが、「その人が自分らしく楽しめる時間をつくる」という点では、共通する部分もあります。
介護の現場での「参加」を考えるとき、レクリエーションだけに目を向けるのではなく、こうした日常のさまざまな場面に目を向けてみるのもよいかもしれません。
まとめ|「できる人」に合わせるのではなく、一人ひとりが参加できる形をつくる
高齢者向けのレクリエーションで参加が難しくなる背景には、認知機能や身体機能の違いだけでなく、経験や好み、その日の体調など、さまざまな要因があります。
全員に同じことをしてもらうのが難しいときは、内容を簡単にするだけでなく、参加の仕方を見直してみましょう。
- 作業をいくつかの工程に分ける「段階化」
- 動作以外にも役割を用意する「役割分担」
- 参加方法を本人に選んでもらう「選択式」
こうした工夫を取り入れると、同じレクリエーションでも関われる場面が増えていきます。
レクは必ずしも一人で最後までやり遂げることではありません。職員の手を借りながら取り組むことも、見学しながら会話を楽しむことも、その人なりの関わり方です。
「できる人」と「できない人」に分けるのではなく、どうすればその人らしく関われるかを考える。日々のレクリエーションを振り返りながら、小さな工夫を一つずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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