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介護美容

船で2時間半、島まで届ける介護美容

中世古祐里

Vol.4:“大伊作島(テイジャクト)で見た「美しくなる力」”

韓国でも、美容を通じて高齢者の自信や生活の活力を取り戻そうとする取り組みが広がりつつある。
今回紹介するのは、仁川大学校大学院ビューティー産業学科の研究者・大学院生が、離島の高齢者を対象に行った「島ヒーリング・ビューティーキャンプ」である。
舞台となったのは、仁川沿岸旅客ターミナルから船で約2時間半、仁川広域市甕津郡に浮かぶ大伊作島(テイジャクト)。
都市部と違い、専門的な美容サービスに触れる機会が少ないこの島で、住民一人ひとりにメイクやスキンケア、ヘアスタイリングを体験できる取り組みだ。
二日間の日程で行われ、参加者の約9割が60歳以上。初日は約20人、2日目は約13人が集まった。
化粧やスキンケアに慣れていない住民も多い。緊張をほぐし、安心して鏡の前に座ってもらうことも、スタッフにとって大切な仕事だった。

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現場を支えたスタッフたち

左:クォン・ヒョクナム先生 中央:ファン・ジンヒ先生 右:チェ・ジエ先生

プログラム全体を統括したのは、仁川大学校大学院ビューティー産業学科研究員のファン・ジンヒ氏である。

船で道具や物品を運び、参加者を集め、現場では高齢者一人ひとりの体調や肌の状態、希望に細かく配慮する。その苦労は決して小さくなかった。
それでもファン氏は、今回のキャンプは自分一人の力で実現したものではないと強調する。

「大伊作島に着いたときは、『島という特殊な環境で、美容教育がどれほど響くだろうか』という不安がありました。しかし、鏡の前で自分の姿を整え、うれしそうにする高齢者の皆さんを見て、大変でしたが充実感を覚えました。それ以上に心に残ったのは、アンケート用紙の余白に手書きで書き込まれた感想でした。『またときどきやってほしい』『生きがいを感じました』という言葉を読み、このプログラムが単なる美容教育にとどまらず、島に暮らす方々の定住満足度や生活の質にまで実際に届いたのだと実感しました」

仁川大学校大学院ビューティー産業学科博士課程のチェ・ジエ氏は、専門知識と実践力を生かし、住民一人ひとりに合わせた美容相談や体験プログラムを担当した。
準備段階では、大きなプレッシャーを感じていたという。

「島ヒーリング・ビューティーキャンプを準備する中で、島が最も忙しい最盛期とボランティア活動の日程が重なりました。生業で忙しい住民の皆さんに時間を割いていただく以上、本当に有意義な時間にしなければならないという責任とプレッシャーがありました」

しかし、プログラムが始まると、その不安は少しずつ喜びへと変わっていった。

「いつも仕事に追われて、自分自身をいたわる余裕がなかった。今回、自分をきれいにし、自分自身を大切にする方法を学び、本当の意味で癒やされる時間を過ごすことができた」

同じく博士課程のクォン・ヒョクナム氏も、印象的な場面に触れる。

そう語る住民の言葉に、チェ氏は「とても意義深く、やりがいのある時間だったと感じました」と振り返る。

「美容に関心はあっても、実際に体験し学べる環境が身近になく、なかなか触れる機会がなかったのだろうと感じました。基礎化粧品や肌のお手入れについての質問にお答えし、メイクをして差し上げたところ、とても喜んでくださり、お子さんに写真を送って見せている姿を目にして、大きなやりがいを感じました。自分自身に足りなかった点はなかったか振り返りながら、今後さらに必要とされることは何か、しっかり見つめていきたいと思います」

このプログラムの特徴は、専門家が一方的に高齢者を「きれいにしてあげる」のではなく、その後も自分自身で美容を楽しめるようにする「セルフビューティーケア」を重視している点にある。
肌の手入れやメイクだけでなく、ヘアスタイリングの方法も伝え、住民が自宅に戻ってからも続けられるケアを学べるようにした。参加者の満足度も非常に高かったという。

美容がもたらした、家族との新しい会話

実際に参加した住民の声からは、美容が高齢女性の心に与える影響の大きさがうかがえる。
80歳のシン・ボクナムさんにとって、セルフビューティーケアを体験するのはこの日が初めてだった。

「こんな島まで人が訪ねてきてくれること自体がありがたい」

そう話したシンさんは、鏡に映る自分を見ながら、うれしそうにこう語った。

「25歳で結婚した時に化粧をしてもらって以来、こんなふうに変身したのは今日が二度目です」

その様子を撮影したチェ氏が、写真をカカオトークのプロフィール写真に設定してあげると、まもなく娘たちから「お母さん、今日何があったの?」と連絡が入った。
一枚の写真が、離れて暮らす家族との新しい会話を生んだのである。

74歳のシン・スンジョンさんも、メイクをした顔のまま帰宅した。

夫や息子に「私の顔をちょっと見てよ。きれい?」と尋ねると、二人とも「きれいだ」と答えたという。
夕食前に化粧を落とすと、今度は息子から「どうして化粧を落としたの?」と聞かれた。

「それだけきれいだったということでしょうね」

シンさんは笑いながら振り返った。

73歳のソン・ノヒさんにとって、本格的に化粧をしたのは結婚後初めてのことだった。
2年前に夫を亡くし、精神的につらい日々を過ごしてきたという。

メイクをした自分の写真を息子と娘に送ると、二人ともすぐに「きれいだね」と褒めてくれた。
ソンさんは短い言葉で、その時の気持ちを表現した。

「メイクをすると、自信が生まれます」

世代をつなぎ、地域をつなぐ美容

この一言は、シニアビューティーケアが持つ意味を端的に表しているように思う。
美容は、単に肌を整えたり、若く見せたりするためだけのものではない。

自分の姿が少し変わることで気持ちが明るくなり、写真を撮りたくなる。その写真を家族に見せれば、そこから新しい会話が始まることもある。

今回のキャンプでは、美容をきっかけに世代を超えた交流も生まれていた。
仁川大学校ビューティー産業学科のメンバーは、専門的なサービスを提供するだけでなく、住民と会話をし、写真を撮り、時にはスマートフォンの操作まで手伝った。

そこにあったのは、美容を教える側と教わる側という一方向の関係ではない。互いに話し、笑い合い、時間を共有する姿だった。

ビューティーケアは、高齢者と若い世代をつなぎ、家族との会話を生み、地域社会との新たな接点をつくるきっかけにもなり得るのである。

「自分自身のため」の時間をつくる

ファン氏によると、キャンプに参加した住民からは「次も必ず来てください」という声が相次ぎ、自治体からの反応も上々だったという。

「おそらく今回のキャンプをきっかけに、これから本当に忙しくなりそうな予感がしています」

ファン氏は笑顔でそう語った。

船で人と道具を運び、島での宿泊の日程を組み、一人ひとりの高齢者と向き合う。決して手軽にできる取り組みではない。
それでもスタッフを再び島へ向かわせるのは、「また来てほしい」という住民の声にほかならない。

そして、チェ氏が住民から聞いた「いつも働くことに追われて、自分をいたわる余裕がなかった」という言葉には、この取り組みが持つもう一つの意味が表れているように思う。
高齢者に美容を届けることは、日々の役割から少し離れ、「誰かのため」ではなく「自分自身のため」に時間を使う機会をつくることでもある。

韓国は、日本以上の速さで高齢化が進んでいる。
これからの高齢者支援には、医療や介護といった身体的な支援だけでなく、「きれいでいたい」「自分らしくありたい」「誰かとつながっていたい」という気持ちにどう応えていくかも、ますます重要になってくるだろう。

大伊作島で出会った高齢女性たちの笑顔は、シニアビューティーケアの価値を改めて教えてくれた。

鏡を見て笑顔になること。
自分のために時間を使うこと。
自分の写真を家族に見せたくなること。
誰かから「きれいだね」と言ってもらうこと。


そして、もう一度、自分自身を大切にし、自分の人生を肯定すること――。
船で2時間半をかけて訪ねた島の女性たちの笑顔は、美容が高齢期の暮らしに与える力を、何より雄弁に物語っていた。

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