一人暮らしの高齢者が抱える心の孤独に、美容ができること

少子高齢化が進む現代日本において、高齢者の一人暮らしは年々増加傾向にあります。2023(令和5)年時点で65歳以上の世帯のうち「単独世帯」は855万3千世帯にのぼり、全高齢者世帯の51.6%を占めています。その内訳は、男性が35.6%、女性が64.4%と、特に女性の単身世帯が多くなっていることが分かります。(出典:厚生労働省 2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況)
一人暮らしの高齢者は、身近に頼れる家族や知人がいない中で、日々の暮らしを営んでいます。家族と離れて暮らすことで感じる寂しさや、ちょっとした体調の変化にも不安を抱えることが少なくありません。
特に課題とされているのが、「心身の健康維持」です。
体の不調は医療でケアできますが、心の不調は気づかれにくく、支援の手が届きづらい現状があります。
そこで、注目されているのが“美容”の力です。一見関係なさそうに思えるかもしれませんが、心のケアにおいて、美容は大きな役割を果たしているのです。
心の健康と”見た目”の関係性

私たちは毎日、鏡に映る自分と向き合いながら生活しています。そしてその姿が、自分の気分や自信に大きく影響していることをご存じでしょうか。
たとえば、髪が綺麗に整っていたり、肌が明るく見えたりすると、自然と気持ちが前向きになります。逆に、ぼさぼさで傷んだ髪、くすんだ肌の状態の自分が鏡に映っていたら、なんとなく気分が沈んでしまう…。そんな経験は誰にでもあるはずです。
高齢者も同じです。年齢を重ねるとともに、外見への関心が薄れていくと考えられがちですが、実際には「きれいでいたい」「清潔でいたい」という気持ちを持ち続けている方が多くいます。
身だしなみを整えることは、単なる見た目の変化にとどまらず、「私はまだ大丈夫」「また出かけてみたい」という心の活力につながります。
「整容」という言葉がありますが、これは身だしなみを整え清潔を保つだけでなく、気分転換や、自信を持って前向きに過ごせるようになります。まさにその習慣が、心を整える時間にもなっているのです。
介護美容とは?
こうした”見た目と心”の関係に着目し、高齢者に美容の力を届ける専門分野が「介護美容」です。
介護美容の概要

介護美容では主に、メイク、ネイル、エステの3つがあり、美容施術を通じて見た目だけでなく、心身全体にアプローチすることを目的としています。
また、カット、カラー、パーマなど通常の美容室サービスを出張形式で行う訪問美容も、介護美容の一部と言えます。
介護美容を通して、見た目が変わるだけでなく、他者とのコミュニケーションが増えることにより、周囲との関わりがより楽しくなり、気持ちも前向きになるといった変化もみられます。
介護美容を支えるケアビューティスト

ケアビューティストとは、介護美容を習得した技術者のことをいい、高齢者に特化した美容施術を提供できる専門職です。美容を通じてADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)を向上し、健康寿命の延伸に寄与することを目指します。
ケアビューティストは施設スタッフやご家族の介助なしで施術を行うことができ、一人ひとりの状態や要望に合わせた美容ケアを提供をします。
訪問美容サービスの一例
たとえば、介護美容研究所がプロデュースする施設向けの訪問美容サービス「Care Sweet」では、介護を必要とする高齢者に対し、美容を通じて心身のケアを行い、多くの施設から喜びの声が集まっています。
また、個人で活動するケアビューティストも全国に増えており、自宅で介護を受けている高齢者への個別対応など、きめ細やかなサービスも喜ばれています。
介護施設でCare Sweetの美容ケアを導入!

ある有料老人ホームでネイルの施術を実施。色選びから始まり、ケアビューティストとの施術中の会話も大盛り上がり。ネイルの仕上がりに満足するだけでなく、心も明るく変わっていきます。
嬉しそうにする利用者を見て、「こんな表情初めてみた!」と施設職員からも喜びの声があがっています。

ケアビューティストが訪問する施設先では…

福岡県を中心に移動型サロンとして活動をしているAさん。
ネイルやフットケア、創作レクリエーションなど、活動の幅は多岐にわたります。
施設職員からは、「美容の力の素晴らしさに驚いた」との声をいただいたり、「自分のやりたかったことが出来た!」と利用者の心の声が多く寄せられているといいます。
美容を通して、見た目を美しくするだけでなく、”その人らしさ”をも引き出し、生きる活力を与えています。
介護美容がもたらす“変化”の声
ここでは、実際に介護美容を利用された方々の事例をご紹介します!
敬老の日のお祝いに介護美容をプレゼント
敬老の日に、ご家族から介護美容の施術をプレゼントされたAさん。施術中は、昔の懐かしいお話から普段のデイサービスでのお話まで大盛り上がり。

はあ〜!こんなに変わるなんて!20歳は若返ったと思います!
1年ぶりのメイクだったこともあり、Aさんはメイクが完成した自分の姿を鏡で見て大喜びされていました。
定期訪問を続けたその先に
認知症で普段の感情の浮き沈みが激しいというBさん。月2回の定期訪問で美容ケアを受けている時は不穏症状も現れることなく、終始リラックスした様子で過ごされています。

『肌モチモチになったね』なんて話したんです♡
久しぶりに面会したBさんの妹さんからは、Bさんと楽しく会話ができたとの喜びの声があがっています。
家族とのあたたかな時間
あるケアビューティストが、訪問介護で担当している利用者Cさんへ介護美容をプレゼント!
その様子を見守っていたCさんのご家族も交えながら施術を進めることに。
ご家族からCさんへの愛情も伝わり、みんなが一体となった瞬間になりました。
こうした言葉や体験は、ただの”美容の体験”を超え、“心のつながり”をも感じさせてくれます。
また、こうしたふれあいの中で、利用者の表情が明るくなったり、少しずつ自信や外出意欲が戻ってくるケースもあります。美容を通じた会話やスキンシップには、孤立感を和らげる力があるのです。
介護美容は、単なる見た目の改善にとどまらず、「その人らしさ」を取り戻すケアとも言えるでしょう。

学ぶ・支える側にも広がる介護美容

「美容の力で誰かを元気にしたい」
そんな想いを持つ人たちの中には、介護美容を学び、ケアビューティストとして活動する道を選ぶ方も増えています。
介護や美容、どちらの経験がなくても大丈夫。
ボランティア活動を通して経験を積む方もいれば、自身の親の介護をきっかけに「自分にも何かできることがあるのでは」と思い、介護美容の道へ進む方もいます。
大切なのは「誰かの役に立ちたい」「みんなを笑顔にしたい」という気持ち。
その想いが、学びを通して力となり、介護美容を必要とする人々の元へと届いていきます。
介護美容研究所では、全国各地から幅広い年齢層の受講生が集まり、それぞれのきっかけや想いを大切にしながら、ケアビューティストとしての第一歩を踏み出しています。
現場で役立つ実践的な学びはもちろん、同じ志を持つ仲間と出会えることも魅力のひとつです。
家族への美容ケアのプレゼント、職場での介護美容の導入、イベントを通してたくさんの方に介護美容に触れてもらうなど、様々なところで介護美容は広がりをみせています。
まとめ:心を支える“美しさ”というケアを
私たちは、年齢を重ねるほど「心のケア」の重要性に気づきます。そして、それを実現する手段のひとつが「美容」であるという発想は、まだ広く知られていないかもしれません。
ですが実際には、一人暮らしの高齢者にとって、美容は“心のよりどころ”となり得るのです。
家族の笑顔が見たい。自分の手で誰かを元気にしたい。
一人暮らしの家族へのプレゼントとして訪問美容を贈ることも、あなた自身が介護美容を学び始めることも、どちらも「心を支えるケア」の第一歩です。
“見た目”を整えることは、“心”を整えること。介護美容は、それをそっと教えてくれる存在です。
介護美容を学ぶなら専門スクールがおすすめ

介護美容研究所は、高齢者向けのヘア・メイク・ネイル・トリートメントなどの施術技術を学ぶことができるプロスクールで、卒業後はケアビューティストとして活躍することができます。
現在、東京校・横浜校・名古屋校・梅田校(大阪)・心斎橋校(大阪)・福岡校の6拠点で開校しており、これまでに2,400名以上のケアビューティストを輩出しています(2025年4月現在)。
実践的なスキルを学ぶ現場実習のほか、卒業後の転職サポートも提供しており、学ぶだけでなくキャリアを築くためのサポートが充実しています。
介護美容研究所では、介護美容に興味を持ってくださった方を対象に、カリキュラムの内容や講座料金などの詳細を記載したパンフレットを無料でお送りしています。
興味のある方は、まずは無料で資料をご請求ください。
