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介護現場必見!冬の高齢者には「体調管理×美容ケア」で健康と笑顔を守る

豊田紘史

冬は高齢者にとって、一年の中で最も体調を崩しやすい季節です。
感染症の流行、肌の乾燥、脱水、血圧変動。
介護施設のスタッフであれば「冬はいつもヒヤヒヤする」「状態が不安定な利用者が増える」と感じる方も多いのではないでしょうか。

今回は、冬のトラブルに見舞われやすい高齢者のケアの対策のほか、「介護現場で美容?」「高齢者ケアと美容って関係あるの?」といった疑問を解消する、美容ケア(介護美容)の力についてもご紹介します。

冬の高齢者の体調管理をする上で、心身共にアプローチできる美容ケアは介護施設職員にこそ知って欲しい内容となっています!

「何をすればいい?」介護現場での冬の体調管理

なぜ高齢者は冬に体調を崩しやすい?

冬は乾燥や感染症のリスクが高まり、体調を崩す人が多い時期です。
ここでは簡単に高齢者が体調を崩しやすくする理由をみていきます。

乾燥による肌のバリア機能低下

外気の寒さだけでなく、暖房の使用により室内がさらに乾燥し、肌の水分が奪われやすくなります。そのため肌のバリア機能が低下し、乾燥や衣服の擦れなどで肌トラブルを起こします。

寒暖差による血圧変動

寒暖差による血圧変動で自律神経の乱れ免疫力低下を引き起こし、結果として感染症にかかりやすくなります。

体温調節機能の低下

加齢に伴い、体温調節機能が低下するため寒暖差に対応しにくくなります。そのため、適切な防寒対策がとれず風邪を引きやすくなります。

冬に多い”隠れ脱水“に要注意!

冬はのどが渇きにくい分、気付かない内に脱水が起こっている場合があります。

隠れ脱水の原因

・空気の乾燥
・のどの渇きを感じにくい
・水分摂取量の低下
・皮膚や呼吸からの水分喪失

冬の隠れ脱水になってしまうのは、これらの自覚しにくい脱水が進みやすい環境にあるためです。

また、高齢者はもともと体内の水分量が少ない上に、「水分不足を自覚していない」「失禁への不安」「夜間トイレの頻度を減らしたい」といった気持ちから、水分の摂取を控えがちになり、脱水のリスクがさらに高まります。

冬の脱水対策

・差湯や温かいお茶をこまめに飲む
・汁物や果物など食べる水分を活用する
・加湿器や濡れタオルで湿度を保つ

このような対策で、冬は目に見えにくい水分ロスを防ぐ工夫をしていきましょう。

参考文献:Doctors Me 編集部,2017年,「冬に高齢者が注意すべき健康トラブルとは?」,Doctors Me,(取得日:2025年11月25日,https://doctors-me.com/column/detail/6668

介護現場での体調管理 5つの基本

トラブルに多く見舞われる冬の時期ですが、以下のポイントを意識することで、高齢者の体調管理がぐっと楽になります。

①身体を冷やさない
冷えは血行不良を招き、免疫力低下に直結します。
首・手首・足首の「三つの首」を温めるだけでも体温維持に効果的です。

②水分補給をこまめに
冬はのどの渇きを感じにくいため、水分不足に気づきにくい時期です。
1回の量は少なくてもよいので、介護現場でも声かけによる小まめな水分補給の習慣化が大切です。

③室内の湿度管理
湿度が低すぎると粘膜が渇き感染しやすく、高齢者の肌荒れも悪化します。
湿度40~60%を保つことで、ウイルスの活動を抑え、のどや肌の乾燥を防ぐことができます。

④栄養バランスを整える
温かい麺類など炭水化物に偏ると栄養バランスが崩れ、肌荒れや疲労が出やすくなります。ビタミン・タンパク質・ミネラルを意識して、免疫や肌の材料をしっかり補うことが大切です。

⑤適度な運動
屋内でできる軽い体操や歩行でも血行促進につながり、体温維持と気分の安定に役立ちます。転倒リスクが上がる季節だからこそ、動きやすい環境づくりを心がけましょう。

「衛生習慣×保湿ケア」で冬のトラブルを回避

冬の体調管理の中で欠かせないのが、手洗い・消毒などの衛生習慣です。
ただし、過度な手洗いは乾燥や手荒れの原因にもなり、肌のバリア機能が弱まると感染症リスクが高まるため、衛生と保湿ケアの両立が冬の介護現場では欠かせません。

衛生と保湿を両立するポイント

①「手洗い+保湿」をセットにする
アルコール消毒の後にワンステップ保湿
保湿剤で水分を奪われた肌をすぐに守ることで、乾燥ダメージを大幅に軽減できます。

②施設内に“保湿ステーション”を設置
手が届く場所に保湿剤があるだけで、自然と保湿が習慣化します。

③個別の肌に合わせたハンドクリームを選ぶ
敏感肌向け・好みの香りなど選択肢を用意することで、ケアの楽しみが増え継続率も高まります。

肌がしっとり整うことで心地よさが生まれ、高齢者の安心感にもつながります。
こうした少しの工夫だけで、簡単に実践することができるので、日頃の手洗いに是非取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献:厚生労働省老健局,2023年,「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」,厚生労働省,(取得日:2025年11月25日,https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001149870.pdf

冬こそ「美容ケア」を取り入れよう!効果を発揮するワケとは

介護施設での美容ケアとは?

まず、「介護美容」という言葉をご存じでしょうか。

これは、高齢者のための美容ケアであり、単なる外見の美しさだけでなく、美容を通して「気持ちが前向きになる」「ストレスの軽減」「リラクゼーション効果」といった心身へのアプローチが期待でき、QOL(生活の質)向上につなげることができるのです。この美容ケアによって

  • 体調や皮膚トラブル
  • 生活リズム
  • 心理状態

といった、冬に弱くなる部分を補い、高齢者の体調管理をサポートします。

血行促進で冷え改善・体温維持

ハンドトリートメントやフットケアを用いた美容ケアで、身体の末端を温めると血流が改善され、冬に起こりやすい冷えやむくみを緩和します。

体温調節機能の向上(一例)

・血流が改善され酸素・栄養の供給が増加
・筋肉のこわばりや冷えによる転倒リスク軽減

乾燥・肌トラブル軽減によるQOLの向上

高齢者の冬の肌は乾燥やかゆみが増え、不快感やストレスの原因となります。
日々の生活の中で、美容ケアの一環として丁寧に保湿を行うことで、皮膚のバリア機能が向上し、日常生活の快適さやQOL(生活の質)が向上します。

美容ケアによるQOLの向上(一例)

・乾燥やかゆみの軽減、肌トラブルに悩まなくなる
・肌の心地よさによる気分改善

触れ合いで安心・安定を促す

人は優しく触れ合うことで、脳の視床下部から「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンを分泌させます。このオキシトシンには、幸福感を高めたり、脳内のストレスの軽減、不安や心配を和らげる働きがあるのです。
保湿ケアや手足のトリートメントといったタッチングケアにより、高齢者に安心感を与え、心の安定感とリラックス効果をもたらしてくれます。

タッチングケアで得られる効果(一例)

・オキシトシンの分泌促進により気分が安定
・ストレスや不安感の軽減
・安眠をサポート

心理的ADLの向上

美容ケアを受けた高齢者は、表情がやわらかくなることが多く、笑顔や表情の変化につながることが報告されています。

美容ケアによる心理的ADLの向上(一例)

・会話が増える・他社との関わりが活発になる
・自分でやりたいことが出てくる
・気分の落ち込みが和らぐ

このように、美容ケアは冬の高齢者の体調管理において、寒さからくる不調やトラブルを防ぎながら、心と身体の両面からサポートできる方法といえます。

参考文献:小川奈美子・黒田久美子・小河原聡・三宅直之・町田和彦,2014年,「老人保健施設入所者におけるハンドトリートメントの心理生理学的効果」(取得日:2025年11月25日,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/69/1/69_24/_pdf

参考文献:山口創(桜美林大学リベラルアーツ学群),「ふれあいと生活におけるオキシトシンの役割」(取得日:2025年11月25日,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/35/3/35_127/_pdf/-char/ja

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介護施設でできる美容ケアの工夫

冬の感染症対策は重要ですが、「予防ばかり」になるとストレスが溜まりがち。
そこで介護の現場では、今注目の介護美容の要素を取り入れ、楽しみながら実践できる美容ケアを組み合わせることもおすすめです。

冬の手洗いレクリエーション

正しい手洗いをレクリエーション化し、歌やリズムに合わせて楽しく実施。
手洗い後には、香りの選べるハンドクリームで保湿タイムをセットにすることで、感染予防と美容ケアが一度にサポートできます。

癒しのハンドトリートメントタイム

冬は触れ合いが心のケアにもつながる季節。
ハンドトリートメントは血行促進や保湿の効果があるだけでなく、「気持ちがいい」「温まった」と笑顔が増えやすく会話も弾むため、介護美容では定番のケアです。

保湿強化週間

館内の掲示物やレクカレンダーに「乾燥対策週間」を設定し、介護施設職員・利用者が一緒に取り組むことで習慣化を促せます。
冬は乾燥によるかゆみ・赤みが増えるため、利用者の肌の快適さと気持ちの安定を同時に守ることができます。

リフレッシュフットバス

寒さで冷えやすい足元を温めるフットバスは、血行促進・むくみケア・リラックスが一度にできる冬に人気の美容ケアです。
アロマオイルを使用して香りを楽しむことで、ケアをしながら非日常を味わうこともでき、心身のリフレッシュに最適です。

こうした美容ケアは、専門家でなくても取り入れやすく、「やってみたい」「続けたい」という利用者の声にもつながりやすい点も魅力のひとつです。

まとめ

冬は高齢者の体調がもっとも揺らぎやすい季節です。乾燥・冷え・脱水・免疫力の低下といったトラブルが重なるため、日々のケアがそのまま健康維持に直結します。

その中で、美容ケア(介護美容)は肌トラブル防止、触れ合いによる安心感、表情の変化による心理的ADLの向上など、冬に沈みがちな生活を温かく支えてくれる力を持っています。

高齢者にとって負担の大きいこの時期。いつもの体調管理に美容ケアをひとつの流れとして生活の中に取り入れて、少しでも快適に過ごしてもらえるよう工夫してみましょう。

ほんの些細なことでも、高齢者は「心地よさ」「安心感」といった小さな幸せを感じてくれるかもしれません。
そうした積み重ねは「今日も元気に過ごせた」「なんだか気持ちが明るくなった」と、前向きな日々につながっていきます。

「美容」と聞くと特別に感じられるかもしれませんが、介護現場だからこそ活かせる、高齢者のことを思う優しいケアなのです。
まずは、できそうなことから一つずつ。
高齢者の健やかな毎日をサポートし、今年の寒い冬を一緒に乗り切っていきましょう。

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