自分の顔を見なくなった…高齢者の自己肯定感を支える“鏡の力”

「最近、鏡を見ていないようで…」
「おしゃれに関心がなくなってきたみたい」
そんな変化に気づいたことはありませんか?
介護施設や在宅介護の現場では、こうした“さりげない変化”の裏には”高齢者の心のサイン”が隠れているかもしれません。
高齢者の中には、鏡を見るのがつらい、必要を感じないと感じている方が少なくありません。特に介護の現場では、「もう年だから」「誰にも見せるわけじゃないし…」と、自分の見た目を諦めてしまう方もいます。
でも実は、鏡を見ることは、自己肯定感や生活意欲といったQOL(生活の質)と深く関わる行為。鏡を見る習慣があるかどうかで、表情・身だしなみ・コミュニケーション意欲にまで差が出ることもあるのです。
この記事では、介護施設の職員や、在宅で高齢者をケアしているご家族に向けて、
鏡を見なくなった高齢者の心理背景や、鏡を見なくなった高齢者の心の支え方をどう支えるか、自己肯定感を引き出すための具体的な方法などをご紹介します。
(参考文献:井上勝也,1984,「老年心理学の課題」1-11,(2025年7月18日取得,https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja)/石塚敦子/小川妙子,2006,「施設入所高齢者のおしゃれへの関心と動機」1-6(2025年7月18日取得,https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja))

鏡を見る習慣がなくなると、何が起きるのか?

鏡を見ることは、単に“見た目を整える”行為だけでなく、自分の存在を確認する行為=自己認識の時間でもあります。
しかし高齢者の中には、「顔の変化にショックを受けた」「誰にも会わないから必要ないと感じた」「目や体が不自由で鏡が見えにくい」といった理由から、鏡を避けるようになる方も。
その結果、身だしなみや表情への関心が薄れる、口数が減る、無表情になるー。
活動意欲が下がり、部屋にこもりがちになるといった心理的・身体的な影響が出るケースも少なくありません。
社会とのつながりが希薄になり、孤独感や孤立感を抱えることで、身だしなみを気にする気持ちが薄れることも。職員や家族としては、「最近元気がないな」「何をしても反応が薄い」と感じていた背景に、“鏡を見なくなった”ことが関係していたというケースもあるのです。
また、こうした気持ちには。QOL(生活の質)にも直結してきます。
QOL(生活の質)と「鏡を見る習慣」の関係

鏡を見る習慣が減ることは、自己肯定感の低下を引き起こし、高齢者のQOL(生活の質)に様々な悪影響を及ぼすリスクがあります。以下のような影響が指摘されています。
自己肯定感が低下するとどうなる?
- 「自分には価値がない」と感じやすくなる
- 日常生活における意欲や活力が低下
- 人と関わる気持ちが薄れ、社会的孤立へとつながる
鏡を見る習慣が減ることで起きること
- セルフケアへの意識が希薄になる
- 表情や身だしなみを意識しなくなり、気分が落ち込みやすくなる
- 鏡を使った“自己確認の時間”がなくなることで、認知機能の低下を招く可能性も
すぐに取り入れられる対策方
- 食後や洗顔後など「決まったタイミング」で一瞬だけでも鏡を見る習慣をつける
- 無理のない範囲で“自分を見る時間”をつくることで、自己認識や自尊感情が活性化
- その積み重ねが、QOLの維持・向上につながると考えられている
これらの工夫は、特別な技術や大がかりな準備を必要とせず、日々のケアにすぐ取り入れられるものばかりです。
「鏡を見る」という小さな行動から、心の健康と生活の質を守るケアを、今日から取り入れてみましょう。
(参考文献:公益財団法人長寿科学振興財団,2022,「高齢者のQOL」,健康長寿ネット(2025年7月18日取得,https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-shakai/koreisha-qol.html)/福田瑞穂/中川原三枝子/石田賢哉,2023,「化粧プログラムが中高年期の女性に与える心理的な影響」『日本ヒューマンケア科学会』第16巻 第1号:1-14,(2025年7月18日取得,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjahcs/16/1/16_16/_pdf/-char/ja))
声かけと環境の工夫で、「また鏡を見たい」に変える
高齢者がもう一度、鏡を前向きに見るようになるためには、周囲の働きかけが大切です。
ちょっとした環境の工夫や声かけで、心を動かすことができます。
施設・自宅でできる「鏡の工夫」

- ベッドや洗面台の近くに、軽くて割れにくい卓上ミラーを置く
- 花や写真など、見て楽しいものと一緒に鏡を置く
- 食事の前後に、鏡で顔を確認する習慣をつくる
鏡はただ“置く”だけでなく、使いやすく、気持ちが向く位置にあることがポイントです。
効果的な「声かけ」例

- 「今日もいい表情ですね。ちょっと髪を整えてみましょうか?」
- 「鏡で確認したら、お肌がツヤツヤですよ」
- 「私も一緒に見ますね。眉毛をちょっと整えてみましょう」
“整えたくなる自分”に導くには、無理やりではなく共感的な声かけが効果的です。
また、「今日は写真を撮りますよ」「○○さんに会うから素敵にしましょうね」など、“外とのつながり”を意識した声かけも前向きな気持ちを引き出してくれます。

自分で整えるケアが「見たくなる自分」を育てる

鏡を使ったセルフ整容の時間は、高齢者にとって貴重な“自分を大切にする時間”になります。
特別な技術がなくても、以下のような簡単な美容ケアでも十分です。
- ブラシで髪を整える(髪にツヤが出ると見た目も気分もアップ)
- リップやチークを使って血色感を出す
- 眉を軽く描いてあげる or 一緒に描いてみる
- 顔に軽く化粧水をつけて、保湿と気分転換を両立
これらの行為は、「自分でできた」という達成感につながり、自己肯定感や生活への意欲を取り戻す一歩になります。
(参考文献:永田文子 水野正之 平山祐子 川西千惠美,2014,「わが国における高齢者のセルフエスティームに関する文献検討」1-11,(2025年7月18日取得,https://www.ncn.ac.jp/academic/020/2014/2014jns-ncnj06.pdf))
美容レクリエーションやプロの力で「笑顔のスイッチ」を押す

セルフケアだけでなく、施設であれば定期的に美容レクリエーションを取り入れたり、自宅であれば美容の日をつくることも非常に効果的です。
例えば、介護美容を用いたケアビューティストによるケアは、“特別な体験”としての価値があります。
美容ケア実施後の施設職員の感想
セルフケアだけでなく、施設であれば定期的に美容レクリエーションを取り入れたり、自宅であれば美容の日をつくることも非常に効果的です。
例えば、介護美容を用いたケアビューティストによるケアは、“特別な体験”としての価値があります。
美容ケア実施後の施設職員の感想
ここでは、Care sweet導入施設からのリアルな声をご紹介いたします。
訪問美容サービスCare Sweetとは?

介護×美容の専門教育機関「介護美容研究所」を運営する、「株式会社ミライプロジェクト」が展開する新しい訪問美容サービスです。
介護美容を通して、施設内の利用者のQOLの向上や職員採用支援、入居促進をプロデュースしています。また、高齢者専門のケアビューティストが、施設内で安心・安全で楽しい美容プログラムを提供してくれます。

グループホーム:優っくりグループホーム池尻大橋

トリートメントを受けた後は会話の回数が多くなることを実感しています。

ご利用者様がコロナをきっかけに違うフロアのご利用者様との交流がなくなってしまった中、この美容レクを機に違うフロアの方々と交流をすることで気分転換になるではと考えています。
介護付き有料老人ホーム:ライフピア八瀬大原Ⅰ番館

先入観で、”反応の少ない方”だという見方をしていたと感じました。美容で本当に表情が変わる事を実感しています。
介護付き有料老人ホーム:パームコートまつばら

施術された後はみなさま笑顔が出て、気分も上がりADL向上への相乗効果を感じます。
よく実施されている美容レクリエーション(一例)

- スキンケア・ハンド&フットトリートメント
- 整髪とメイクをして写真撮影を行う“変身デー”
- 季節に合わせたネイルカラー
- イベントや誕生日会を兼ねたファッションショー
外見が整うことで、内面も明るくなり、対人関係にも前向きになるというのが、介護美容の持つ力です。
月1回の“おしゃれの日”など、小さな工夫からでも十分効果があります。
まとめ:鏡を通して「もう一度、自分とつながる」ケアを
「鏡を見ない高齢者」への対応には、ほんの少しの工夫と寄り添いが必要です。
整容や美容ケアは、清潔感や見た目以上に、心の健康や自己肯定感を支える要素でもあります。
施設職員やご家族の手によるセルフケアのサポート、プロによる美容ケア。どれも「自分を大切に思える時間」が提供できる方法です。
“見せたいから整える”ではなく、“見たいと思える自分になる”
そのきっかけとして、鏡や美容ケアはとても有効だといえるでしょう。
今日のケアが、
「もう一度、自分の顔を見てみよう」
そう思ってもらえるきっかけになりますように。
整容や美容を通じて、その人らしさと笑顔を引き出す—その第一歩として、ぜひ“鏡の力”を見直してみてはいかがでしょうか。
介護美容を学ぶなら専門スクールがおすすめ

介護美容研究所は、高齢者向けのヘア・メイク・ネイル・トリートメントなどの施術技術を学ぶことができるプロスクールで、卒業後はケアビューティストとして活躍することができます。
現在、東京校・横浜校・名古屋校・梅田校(大阪)・心斎橋校(大阪)・福岡校の6拠点で開校しており、これまでに2,400名以上のケアビューティストを輩出しています(2025年4月現在)。
実践的なスキルを学ぶ現場実習のほか、卒業後の転職サポートも提供しており、学ぶだけでなくキャリアを築くためのサポートが充実しています。
介護美容研究所では、介護美容に興味を持ってくださった方を対象に、カリキュラムの内容や講座料金などの詳細を記載したパンフレットを無料でお送りしています。
興味のある方は、まずは無料で資料をご請求ください。
