介護疲れで限界…心と体を守るための公的支援制度と小さな5つの習慣

「もう限界かも…」
そんな思いを胸に、今日も介護に向き合っている方は少なくありません。
食事、入浴、通院、夜間の見守りー終わりのない日々に、気づけば自分自身の心と体がすり減っている。
でも、誰にも「つらい」と言えない。
「私さえ我慢すれば」と、大切な人を想い、懸命に向き合うからこそ、自分のことはいつも後回しになっていないでしょうか。
今回は、そんな見えづらい”介護疲れ”や”介護ストレス”に気づくためのサインや、心と身体を守るために今からでもできることをご紹介します。
知っておきたい介護者を支援する制度や相談先、心が少し軽くなる習慣など、今のあなたを助けてくれる「小さなヒント」になるはずです。
大切なのは、「ひとりでがんばりすぎないこと」。
まずは、できそうなことから、ひとつ始めてみませんか。
介護疲れ・介護ストレスとは?限界を迎える前に知っておきたいサイン

介護疲れや介護ストレスは、気付かない内にじわじわと積み重なっていきます。心身の不調が現れたときには、すでに「限界寸前…」なんていうことも。
ここでは、見逃しやすい心の変化や、介護をする上で知っておきたいサインについてみていきます。
身体的な疲れだけじゃない、心の摩耗
「介護疲れ」「介護ストレス」と聞くと、まず頭に浮かぶのは身体の疲労ではないでしょうか。
日中の食事や、重たい身体を支えながらの入浴介助。夜中のトイレの見守りに、通院の付き添い。気付けば1日中介護の場面だらけで、このような日々の繰り返しで体力も限界に。
けれど、実はそれ以上にじわじわと追い詰められているのは「心の疲れ」の方です。
誰かの命を預かるという緊張感。少しの不手際が相手の健康に影響するという責任感。
そして、どんなに頑張っても報われないように感じる孤独感。
それらが、少しずつ心をすり減らしてしまいます。
自覚しにくい「心の赤信号」とは?
介護疲れが深刻になる前に、自分自身の「心の赤信号」に気づくことが大切です。
例えば、次のようなサインは要注意です。
- 食欲がない、眠れない、イライラが続く
- ちょっとしたことで涙が出る
- 誰かと話すのが億劫になる
- 自分の存在に価値を感じられなくなる
これらは、心が限界に近づいているサインかもしれません。
身体の不調には気づきやすいものですが、心の不調は見えにくく、つい無視してしまいがちです。
「ただの疲れかな」と見過ごさず、自分の変化に敏感になることが、長く介護を続けていくうえでとても重要です。
介護疲れの背景にある“ひとりで抱え込む”環境
どうして、ここまで介護疲れが深刻化してしまうのでしょうか?
そこには「誰にも頼れない」「相談できない」といった孤立した環境がみえてきます。
介護者支援の制度やサービスがある一方、支援を受けづらい空気感や家庭内での温度差も、介護ストレスを深める原因になっている可能性があるのです。
相談できない空気

「つらい」と言えない。「助けて」と頼れない。
そんな空気感が、介護の現場にはよくあります。
周囲から「あなたがいてくれて助かった」と感謝される一方で、自分のしんどさは誰にも言えないことも。
言ったところで、「みんなそうなんだから頑張って」「あなただけじゃないよ」と返されると、余計に孤独を感じてしまう…。
だからこそ、「相談できないこと」自体が、介護疲れをより深めてしまいます。
家族や兄弟との温度差

介護の担い手が一人に偏ってしまうケースも多く見られます。
実家の近くに住んでいる長女が全てを担い、他のきょうだいは「たまに電話をするだけ」など、家族の中でもサポート体制に大きな温度差があることも。
「私だって仕事を休んでるのに」「どうして私だけが」と感じても、家族間の関係性がこじれるのを恐れて何も言えず、結果的に自分を追い詰めてしまいます。
自分の時間が持てないことの深刻さ

介護の合間のわずかな時間さえ、「やらなきゃいけないこと」で埋め尽くされていないでしょうか。
買い物、掃除、洗濯。通院手配や事務作業など。
それに加えて「高齢者の様子が気になって、ゆっくり外出もできない」という状況では、自分の心を休める余裕が生まれません。
自分の時間がまったくない状態が続くと、「自分の存在意義」すら見えなくなることがあります。
「私はただのお世話係?」「私の人生って何だろう?」
そんな疑問が頭をよぎるときには、既に身体も心も疲れ切ってしまっています。
公的支援制度を活用して介護ストレスを軽減
介護は、体力も気力も必要な仕事。それをひとりきりで抱え込んでしまうと、心も身体も疲れ果て、介護どころではなくなってしまいます。
そんな“ひとり介護”を防ぐべく、国や自治体が用意してくれている公的支援制度がたくさんあります。
「知らなかった」ではもったいない、使える制度を知っておくことで、強力なサポートを得ることができるはずです。
介護休業・介護休暇と給付金の活用

まずはじめに知っておくべき制度は、介護が必要になった家族のために、お仕事を一時的に休むことができる「介護休業」や「介護休暇」という制度と、給付金についてです。
- 介護休業
要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休暇を取得できます。 - 介護休暇
要介護状態にある対象家族が1人の場合は1年間で5日まで、2人以上の場合は1年間で10日まで、1日または時間単位で休暇が取得できます。 - 介護休業給付金
家族の介護のために仕事を休業する際に、雇用保険から賃金の67%が支給される制度です。
また、2025年4月からは、企業にはこれらの制度を社員にきちんと知らせることが義務付けられています。
「職場に迷惑をかけそう…」と悩む前に、まずは職場に相談してみましょう。
(参考サイト:介護休業制度特設サイト|厚生労働省 / 育児・介護休業法令和6年(2024年)改正内容の解説)
迷ったら、地域包括支援センターへ

「介護って、何から始めたらいいの?」
そんな時に頼れる、最初の相談窓口的存在が、地域包括支援センターです。
各市区町村にあり、介護に関することならどんなことでも無料で相談できます。必要なサービスを調べたり、ケアマネジャー(介護の専門家)を紹介してもらうこともできます。
また、お住まいの地域の支援センターは、市役所や自治体のホームページで調べることができます。
(参考サイト:地域包括ケアシステム|厚生労働省)
介護のホットラインで気軽に相談

「顔を合わせずに相談したい」「誰かに話を聞いてもらいたい」
そんな方は、電話やオンラインでの相談窓口がおすすめです。
地域や各自治体の相談ダイヤルなど無料で相談できる窓口がたくさんあります。
匿名で相談もでき、24時間365日対応してくれるところが多いため、思い立った時にすぐ相談することもできます。
「自分だけがつらいのかも」と悩む前に、まず誰かに話してみるだけでも、心が軽くなるはずです。
(参考サイト:電話相談窓口|困った時の相談方法・窓口|まもろうよ こころ|厚生労働省)
介護保険サービスを使って”ひと休み”

「レスパイトケア」という単語を聞いたことはあるでしょうか。これは、普段だれかのケアを行っている人が休息できるよう支援すること、つまり「ケアする人のケア」のことです。
頑張りすぎた心と体をリセットするには、“介護者の休息”が必ず必要です。
そこで役立つのが、介護保険を使った「レスパイトケア」です。
代表的なものに、「デイサービス」や「ショートステイ」があります。数日だけ施設に預けたり、日中だけ通ってもらったりすることで、介護する人も休むことができます。
- デイサービス/通所介護
日帰りで施設に通い、サービスが利用できる食事、入浴、排泄などの日常生活の介護、機能訓練、レクリエーションなどのサービスが提供されます。 - ショートステイ/短期入所生活介護
短期的に施設に宿泊するサービス
デイサービスとほぼ同様のサービスが提供されます。
これらのサービスと介護休業や介護休暇と組み合わせれば、長めの”ひと休み期間”を作ることも可能です。
(参考サイト:介護事業所・生活関連情報検索|厚生労働省)
家族介護教室・認知症サポーター養成講座に参加

「どう接すればいいかわからない」「介護の正しい方法を知りたい」
家族だからといっても、介護をするようになってからの接し方や、介護のやり方への疑問や不安は尽きません。
そんな時は、自治体や地域包括支援センターが主催している家族介護教室や認知症サポーター養成講座に参加してみましょう。
介護の知識やコツを学ぶことで、不安やイライラが減ったり、同じ問題を抱えている仲間とつながることで孤立感もやわらぎます。参加は無料のことが多く、リーフレットや実技体験つきの講座もあります。
「相談するほどじゃないけれど、今よりも現状を良くしたい。」と感じている方には、まずはこうした学びの場から始めるのもおすすめです。
(参考サイト:政策について/認知症サポーター|厚生労働省)
このような制度やサービスを知って、周囲の手を借りながら、あなた自身の心と体も守ることが大切です。
まずは、ひとつでも「できそう」と思えることから始めてみてください。
心が少し軽くなる「5つのリセット習慣」
介護疲れによる限界がくるまで頑張ってしまう前に、一度ちょっと立ち止まってみてみましょう。
大がかりなことをしなくても、心をリセットできる習慣はたくさんあります。
ここでは、介護ストレスの軽減や、介護者のうつ予防など、介護に携わる多くの人が「これで気持ちが軽くなった」と感じた、5つの習慣をご紹介します。
深呼吸する時間をつくる

深呼吸は、自律神経を整えるだけでなく、介護ストレスの軽減にも役立ちます。
1日に3分だけでも、目を閉じて深呼吸をしてみましょう。
鼻からゆっくり息を吸って、口からゆっくり吐く。たったこれだけでも、心の緊張が緩む効果があります。
忙しい日々のなかでも、「今、深呼吸しよう」と自分に声をかけることで、気づきにくい心の乱れを整える第一歩になります。
好きな音楽を聴く

音楽には、記憶や感情を呼び起こし、脳を活性化させる力があります。
昔よく聴いていたお気に入りの曲や、癒し効果のあるメロディなど。介護の合間に流してみるだけでも、気分が少し前向きになったという声もあります。
高齢者と一緒に懐かしの曲を聴きながら口ずさむのもおすすめです。音楽の力で、お互いの表情がやわらかくなることもあります。
小さなおしゃれをしてみる

たとえば、今日は少し明るめの口紅をつけてみる。
お気に入りのピアスをつけたり、好きな色のネイルを塗ったり。
それだけで、「今日はちょっといい日かも」と思えることがあります。
介護の場では「機能性」や「汚れにくさ」が重視されがちですが、好きなもので自分の気持ちを上げてくれる装いも、ときには必要です。
プロの力を借りてみる

介護はひとりで全てを背負い込む必要はありません。
介護保険制度を活用した訪問介護やデイサービス、ショートステイの利用も立派な「自分なりの介護」です。
また、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するのも良いでしょう。
こうした支援をうまく活用することが、介護者支援や介護者のうつ予防につながります。
「自分だけで頑張らなきゃ」と思う意識を少し変えるだけで、思いがけない助けが得られることもあります。
訪問美容サービスの活用

「美容」の力も、介護疲れを癒すためのひとつの手段です。
最近では、自宅や施設にプロの美容スタッフが訪問して、ヘアカット・メイク・ネイルなどを施術する訪問美容サービスが注目されています。
特に、高齢のご家族が施術を受けて笑顔になる瞬間は、介護をする側にとっても大きな喜びに。「キレイにしてもらって嬉しい」その一言が、何よりの救いになります。
また、美容サービスは介護をする側も一緒に受けられることも。介護をする側の心の癒しにもなり、介護ストレスを和らげる効果も期待できます。
日頃、頑張っている自分に労いの気持ちを込めて、美容サービスを受けてリフレッシュするのもよいでしょう。身も心も軽くなり、モチベーションもアップします。
自分自身が”ケアビューティスト”になるという道

「このままでいいのかな」「自分の人生が後回しになっている気がする」
介護の中で、そんなふうに思うことはありませんか?
介護をする日々は、相手を思う優しさと責任感がなければ続けらません。しかしその一方で、自分自身の未来が見えなくなってしまうことも少なくありません。
そんななかで、ひとつの選択肢として注目されているのが、”ケアビューティスト”という仕事です。 美容を通して高齢者の“心のケア”を担う専門家です。メイクやネイルで自己肯定感を引き出し、その人らしさ取り戻すお手伝いをします。介護をしているあなたには、すでに人の痛みや不安に寄り添う力があります。
その経験を活かして、「誰かの役に立ちながら、自分の気持ちも救われる」という働き方ができるのが、ケアビューティストの魅力です。
実際、介護疲れを経験した方がケアビューティストとして活動する中で、「ありがとう」「うれしい」の言葉に救われ、自分自身が元気をもらっているという声もあります。
今の介護経験が、新しい未来に繋がる可能性があるかもしれません。
まとめ|「わたし」も大切にする介護を
介護をするということは、誰かの人生を支えるということ。
その素晴らしい行動に、あなたの存在が欠かせないのは間違いありません。
ですが、誰かを支えるためには、まず自分自身が健康で笑顔でいることが大切です。
「少し休憩してみる」「好きな音楽を聴く」「ちょっぴりおしゃれをする」
ほんの少しでも自分の心が軽くなる時間を持てたら、それはきっと、明日を乗り切る力になります。
介護の途中で、深呼吸をするように。
「自分のための時間」も、どうか忘れずに持っていてくださいね。
介護美容を学ぶなら専門スクールがおすすめ

介護美容研究所は、高齢者向けのヘア・メイク・ネイル・トリートメントなどの施術技術を学ぶことができるプロスクールで、卒業後はケアビューティストとして活躍することができます。
現在、東京校・横浜校・名古屋校・梅田校(大阪)・心斎橋校(大阪)・福岡校の6拠点で開校しており、これまでに2,400名以上のケアビューティストを輩出しています(2025年4月現在)。
実践的なスキルを学ぶ現場実習のほか、卒業後の転職サポートも提供しており、学ぶだけでなくキャリアを築くためのサポートが充実しています。
介護美容研究所では、介護美容に興味を持ってくださった方を対象に、カリキュラムの内容や講座料金などの詳細を記載したパンフレットを無料でお送りしています。
興味のある方は、まずは無料で資料をご請求ください。
