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レクリエーション

認知症の方におすすめのレクリエーション5選|効果や選び方も解説

中世古祐里

「職場でレク担当になり、認知症の方向けの良いアイデアを探している」「認知症の方にレクを行っているけど、うまくいかない」とお悩みの方もいるでしょう。

認知機能の低下や個人差を考慮しつつ、安全で楽しめる活動を見つけるのは、想像以上に難しいものです。適切なレクを選ばないと、参加者が混乱したり、不安になったりする可能性もあります。

本記事では、認知症の方に良い効果が実証されているレクリエーションを5つ紹介します。また、認知症の方にレクリエーションを行う効果やレクリエーション中によくあるトラブルと対処法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

認知症の方にレクリエーションを行う目的

認知症の方は、記憶力の低下や判断力の衰えにより、日常生活に支障をきたすことがあります。その結果、自信を失っている方も少なくありません。また、不安や孤独を感じやすく、社会との関わりが減少しがちです。

こうした課題に対応するため、認知症の方へのレクリエーションには次のような目的があります。

  • 認知症の進みを遅らせ、穏やかな日々を送れるようにすること
  • 集団でのレクリエーションを通じて、人とのつながりを感じられる機会を作ること
  • 好きなことや得意分野を活かした活動を通じて、自信や生きがいを感じられること

認知症の方にレクリエーションを行う効果

大妻女子大学の「介護老人福祉施設におけるレクリエーションの現状と課題」によると、認知症の方にレクリエーションを行うと、次のような効果が期待できるようです。

  • 認知機能の維持
  • 精神面の安定
  • コミュニケーションの促進

順番に見ていきましょう。

認知機能の維持

認知症の人へのレクリエーションは、脳に丁度良い刺激を与えられます。これにより、物事を覚えたり考えたりする力が弱くなるのを、少しでも遅らせる効果が期待できます。

ただし、効果を高めるには、利用者一人ひとりの状態をよく見て、無理のない計画を立てることが大切です。楽しみながら続けられる活動を選ぶことで、日々の生活に張りが生まれ、結果として認知機能の維持につながります。

精神面の安定

認知症の方は、自身の症状に不安を感じやすいと言われています。物忘れがひどくなったり、場所や時間がわからなくなったりして、自信をなくしていく方も少なくありません。

楽しみながら取り組めるレクリエーションは、認知症の方の不安を和らげ、心を落ち着かせる効果があります。昔から好きだった趣味をしたり、新しい遊びに挑戦したりすることで「自分にもまだできることがある」と自信を取り戻せます。みんなで笑ったり、できたことを一緒に喜んだりする中で、自然と前向きな気持ちが生まれるようです。

コミュニケーションの促進

認知症の方は、症状の進行とともに人とのやりとりが難しくなっていきます。言葉がうまく出てこなかったり、会話の内容を理解するのに時間がかかったりして、徐々に周りの人との交流が減っていきがちです。

そのような中で、レクリエーションは人とのつながりを取り戻す大切な機会となります。「楽しかったね」「また一緒にやろう」といった何気ない言葉のやりとりが、人とのつながりを感じさせてくれます。また、言葉が出にくくても、顔の表情や手の動きで気持ちを伝え合えることも多いのです。

こうした温かな時間は、認知症の方の心を和ませ、孤独感を和らげる助けになります。

レクリエーションの3つの種類

高齢者介護施設で行われているレクリエーションの種類と特徴は、以下のとおりです。

レクリエーションの種類特徴レクリエーションの例
集団レクリエーション・大勢で楽しめる
・交流を楽しめる
・能力差に配慮が必要
・体操
・歌唱
・ゲーム大会
個別レクリエーション・1人または少人数制
・個人の興味に合わせやすい
・自分のペースで楽しめる
・将棋
・塗り絵
・手芸
基礎生活レクリエーション・日常生活の中で実施
・重度認知症の方にも適用可
・特別な時間設定不要
・食事時に音楽を流す
・部屋の装飾を行う
・昔の写真や映像を見る

軽度の認知症の方には集団や個別のレクリエーションから、重度の方には基礎生活レクリエーションから始めるのが良いでしょう。

参加者の状態や気分に合わせて柔軟に対応し、無理強いせず自然に参加できるレクリエーションを選んでみてください。

認知症の方向けのレクリエーション5選

ここでは、認知症の方にとくにおすすめのレクリエーションとして、以下の5つを紹介します。

  • 回想法(昔語り)
  • ドールセラピー
  • 美容
  • 料理
  • 音楽療法

認知症の方でも日常的に楽しめる簡単な手遊びやゲーム、脳トレ、軽い体操などのレクリエーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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回想法(昔語り)

回想法は、懐かしい思い出を共有することで脳の活性化や情緒の安定を図り、認知症予防やうつ症状の改善に役立つと言われています。簡単な道具や映像を使って、施設や家庭でも気軽に実践できます。

【準備するもの】
懐かしい記憶を呼び起こすもの(アルバムや古い写真、音楽、おもちゃなど)

【子どもの頃の遊びをテーマにした回想法の手順】

  1. コマ、おはじき、ベーゴマ、お手玉、紙風船などを準備する
  2. 参加者が懐かしいおもちゃに触れながら、過去の遊び方を回想し自由に話す
  3. スタッフは話題の提供を行い、参加者の発言を促す
  4. 参加者同士の話から内容や感想を自由に発表する
  5. 1時間程度で終了し、参加者の反応を観察・記録する

【注意点】

  • 正確さよりも安心感を重視し、話の内容を否定・訂正しない
  • 傾聴の姿勢を保ち、共感的な態度で接する
  • 暗い話題になった場合は、最後に明るい方向へ誘導する
  • 個人情報の取り扱いに注意し、無断で他者に話さない

ドールセラピー

ドールセラピーとは、赤ちゃん人形や動物のぬいぐるみなどの人形を活用したレクリエーションです。赤ちゃん人形を用いた療法では、認知症の症状である攻撃性の軽減や言語機能の改善、孤独感の緩和などの効果が報告されています。

【準備するもの】
赤ちゃん人形、日本人形、動物のぬいぐるみ

【赤ちゃん人形を用いたレクリエーションの実施方法】

  1. 複数の赤ちゃん人形を準備し、参加者に好みのものを選んでもらう
  2. スタッフが自然に人形を紹介し、参加者にやさしく手渡す
  3. 参加者が人形に触れたり抱いたりする様子を見守り、自然に話しかける
  4. 人形を通じて、子育ての思い出や感想を引き出す
  5. 30分程度でセッションを終了し、参加者の反応を観察・記録する

【具体的な声掛けの例】

  • 導入時「かわいい赤ちゃん人形を見つけたんです。一緒に見てみませんか?」
  • 人形選び「この中で、どの赤ちゃんが一番かわいいと思いますか?」
  • 触れるとき「とても柔らかくて温かいですね。抱っこしてみませんか?」
  • 回想を促す「お子さんが小さかった頃のことを思い出しますか?」
  • 感情を引き出す「赤ちゃんを抱くと、どんな気持ちになりますか?」
  • 終了時「赤ちゃんもそろそろお昼寝の時間ですね。また明日会いましょう」

【注意点】

  • 参加者の自尊心を尊重し、強制せずに自然な反応を大切にする
  • 人形を「モノ」ではなく「ヒト」として扱い、丁寧に接する
  • 参加者と人形の関係が過度に強くなった場合は、セッションを中止する
  • 個人情報の取り扱いに十分注意し、プライバシーを守る

出典:認知症高齢者の攻撃性に対する赤ちゃん人形療法の効果|滋賀県立大学 人間看護学部

美容

美容系のレクリエーションは、高齢者や認知症の方のQOL(生活の質)を向上させ、心身の健康を促進する療法です。

専門家の研究によれば、認知症の方に化粧を行うと、心が落ち着き、笑顔が増えるという効果が確認されています。

出典:認知症患者さんに対する化粧療法の早期効果を臨床試験で証明|国立大学法人 岡山大学

【美容レクリエーションの例】

  • 基礎的なスキンケアとメイク
  • 髪の手入れと簡単なスタイリング
  • 爪のお手入れとマニキュア
  • 手指のケアとリラックスマッサージ
  • 顔の筋肉を動かすやさしい体操
  • 香りを楽しむアロマセラピー
  • 季節感のある装いの提案

【注意点】

  • 美容と医療・介護の専門知識を組み合わせて実施する
  • メイク道具の衛生管理を徹底する
  • 利用者に負担のかからない適切な姿勢を保持する

美容系のレクリエーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。

高齢者向け美容レクリエーション6選|導入効果や学ぶメリットも解説

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料理

料理は手順を考えながら作業をするため、頭の体操になります。ある施設では、高齢の認知症女性が料理活動に参加することで、不安な気持ちが和らぎ、少しずつ自信を取り戻していったそうです。

また、長く立てる時間が増えたり、短い距離を歩けるようになるなど、体の動きも改善傾向が見られました。人との関わりも増え、認知症ケアの大切な方法の一つとして注目されています。

これまで料理をあまりしてこなかった男性でも「手伝い」や「仕事」として声をかけると、積極的に参加される方も多いようです。献立決めから後片付けまで、みんなで役割分担をして進めていけるため、一緒に作って食べる喜びも大切な要素になっています。

出典:料理療法  調理による認知症ケアと予防の効果|日本調理科学会誌

音楽

音楽には認知症の方の心を和ませ、意欲を高める効果があるようです。歌うことで脳の血流が増えるという研究結果もあります。

また、懐かしい歌を聴いたり歌ったりすることで、長い間忘れていた記憶が蘇ることも。これが脳を刺激し、認知症の進行を遅らせる可能性があるとも考えられています。

【音楽療法の例】

  • 音楽を聴く
  • リズム体操
  • イントロクイズ
  • カラオケ
  • 合唱
  • 楽器の演奏

音楽レクリエーションを実施する際は、なるべく参加者全員が知っている曲を選曲するのがポイントです。

出典:回想法や音楽療法は認知症に有効でしょうか? | 国立長寿医療研究センター

認知症の方に適したレクリエーションの選び方

認知症の方向けのレクリエーションを選ぶ際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • ADLレベルをそろえる
  • 趣味や過去の経験を活かせるものを選ぶ

それぞれ解説します。

ADLレベルをそろえる

ADLとは、食事、排泄、入浴など基本的な生活行為のことを指します。同じくらいの能力の方々でグループを作ることで、お互いに楽しく、安全に活動できます。

趣味や好みも考慮し、簡単なルールで楽しめる内容を選びましょう。認知症の方の集中力を考えて、1時間程度で終わる活動が理想的です。

趣味や過去の経験を活かせるものを選ぶ

認知症の方には、趣味や過去の経験を活かしたレクリエーションが効果的だと言われています。親しんできた活動は長年の記憶を呼び覚まし、自信につながるためです。また、慣れ親しんだ環境は安心感を与え、不安を和らげる効果があります。

趣味、過去の経験、得意分野活かせる活動
料理・野菜の下ごしらえ
・簡単なおやつ作り
・メニュー考案
おしゃれや美容・お化粧
・ネイル
・髪のセットやアレンジ
・ハンドマッサージ
園芸・植物の世話
・寄せ植えの作成
・野菜や花の栽培アドバイス
音楽・歌う
・楽器演奏
・イントロクイズ
書道や絵画・季節のはがき作成
・施設の飾り物制作
・書道
手芸や裁縫・小物作り(ポーチ、コースターなど)
・編み物や刺繍のワークショップ

作った作品や活動の様子を写真に撮り、アルバムにまとめるなど、成果物の記録を残すのもおすすめです。本人の自信につながり、家族との会話のきっかけにもなります。

また、楽しかった思い出を呼び起こす回想法としても活用でき、ポジティブな感情を引き出す効果もあります。

認知症の方のレクリエーション中によくあるトラブルと対処法

認知症の方のレクリエーション中によくあるトラブルには、以下のようなものがあります。

  • 大声を出してしまう
  • レクリエーションと関係のない行動をとる
  • 道具の誤使用や収集行動
  • 被害妄想

それぞれの対処法について解説しているので、参考にしてみてください。

大声を出してしまう場合の対処法

認知症の方は感情のコントロールが難しく、不安から大声を出すことがあります。そのようなときは叱らず、場所や対応する人を変えてみましょう。別の職員が静かな場所に誘導し、落ち着くまでゆっくり話を聞くのも効果的です。

無理に活動に戻さず、個別対応を続けるか、落ち着いてから再参加を促すなど、柔軟な対応が大切です。

レクリエーションと関係のない行動をとるときの対処法

認知症の方は記憶力や集中力の低下により、突然席を立ったり、関係ない話を始めることがあります。厳しく注意せず、まずは行動を見守り、話をじっくり聞きましょう。その後、さりげなくレクリエーションに注意を向けるような声かけをします。

無理強いせず、個人のペースを尊重しながら、楽しく参加できるよう支援することが重要です。

道具の誤使用や収集行動への対処法

認知症が進行すると、食べ物と非食品の区別がつかなくなる「異食行動」が見られることがあります。これは、道具を口に入れたり、不適切なものを食べようとしたりする行動です。安全のため、口に入る小さな道具は避け、代替品を用意しましょう。

異食行動が見られたら、穏やかに声をかけ、口から出すよう促します。また、道具の紛失を防ぐため、活動後は必ず数を確認し、丁寧に回収することが大切です。

被害妄想への対処法

認知症の方に見られる被害妄想は、介護者にとって大きな負担となることがあります。レクリエーション中に「道具を盗まれた」「悪口を言われた」などの訴えがあっても、決して否定せず、まずは話をよく聞きましょう。

本人の不安や孤独感が原因であることを理解し、共感的な態度で接することが大切です。安心感を与えるような声かけや環境作りを心がけ、必要に応じて静かな場所で個別に対応することも効果的です。

まとめ:認知症の方に寄り添う効果的なレクリエーションを実践しよう!

認知症の方へのレクリエーションは、認知機能の維持や精神面の安定など、さまざまな効果が期待できます。

今回は、認知症の方におすすめのレクリエーションとして、以下の4つを紹介しました。

  • 回想法(昔語り)
  • ドールセラピー
  • 化粧療法
  • 料理

なかでも、ネイルやメイクなどを行う美容系のレクリエーションは近年人気を集めており、導入する施設が増えています。好みに合わせていつも新鮮なおしゃれを楽しめるため、マンネリが起きにくく、ほかの身体的なリフレッシュとも差別化しやすいのが特徴です。

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