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未経験から介護美容一本で生計を立てるまで|宮崎さんが選んだ「遠回りしない」キャリアのつくり方

中世古祐里

介護美容に興味はある。
でも——
「介護の経験がない」
「本当に仕事にできるのか不安」
「家庭と両立できるの?」

そんな気持ちから、一歩を踏み出せずにいる人も多いのではないでしょうか。
もしかすると、この記事を読んでいるあなたも同じような迷いを抱えているかもしれません。

今回ご紹介するのは、介護未経験で介護美容の世界に飛び込み、介護美容の仕事一本で生計を立てている、介護美容研究所 大阪校卒業生の宮崎加奈子さんです。

卒業後すぐに独立するのではなく、「現場を知るために介護職として働く」という選択をし、着実に経験を積み重ねてきました。

未経験からでも、ここまでできる。
そのリアルな道のりは、「私にもできるかな?」と、これから介護美容を目指す人にとって大きなヒントになるはずです。

美容の現場で15年|「人が変わる瞬間」を見続けてきた原点

宮崎さんは、百貨店の美容部員として約15年にわたり、幅広い年代のお客様を担当してきました。

メイクやエステで綺麗になることで、お客様の内面の変化を間の当たりに感じていたんです。女性は何歳になっても美しくいるとういのが本当に大事だと実感しました。

そんな経験から、宮崎さんが高齢の方にメイクをする仕事に興味を持ったのは20代の頃でした。しかし、当時はどうやって仕事にすればいいのか分からないまま、月日が流れていきました。

転機となったのは、2年前に亡くなった父の存在。

『足がパンパンにむくんでいる父にどう触れていいのか、最期を看取る時に何かをしてあげたいけど、どうしてあげたらいいのかわからない。触れるのもちょっと怖い。』そう思うタイミングがあったんです。

そのとき感じた気持ちと重なり、介護の知識を学び、これまでの美容部員の経験を活かした仕事に挑戦したいという想いへとつながっていきました。

介護美容研究所へ入学|「自信をもって仕事がしたい」

美容の仕事一本でやってきた私には未知の部分があったので、介護の知識はしっかりとつけて、自分のやりたいことにチャレンジしたかったんです。

介護の知識をきちんと身につけた上で、自信をもって仕事がしたいと考えた宮崎さんは、介護美容研究所への入学を決めます。

私は最低1年はしっかりと通学して自分で自信をもって活動したいと考えていたので、入学を決めました。ご利用者様やご家族の立場になったときに、短期間で学んだり資格をとった人と、時間をかけて学んだ人、どちらにお願いしたいかという視点で、介護美容研究所を選びました。

介護美容研究所への入学は、長く続けられる仕事にするための土台づくりだったといえます。

家庭と学びの両立に向き合った1年|不安の中でも続けられた理由

入学前の大きな不安:子どもの預け先と「本当に通えるか」

介護美容研究所に通学していた当時、宮崎さんには小さなお子さんが2人いました。
育児休暇中での入学を決めたものの、「本当に1年間通いきれるのだろうか」という不安は大きかったといいます。

そこで、事前に次のような準備を徹底していたといいます。

  • 預け先の確保
  • 家族の協力
  • 市の一時預かり制度の活用

入学する時は、どんなライフスタイルになるか想像でしかない中で、本当に卒業できるのかというところが一番不安ではありましたね。

特に子どもの預け先の確約がないと通学は無理だと思ったので、事前によく調べました。

子育てをしながら新しいことに挑戦することは、誰もが感じる不安ではないでしょうか。
だからこそ、宮崎さんはただ不安を抱えたまま勢いで進むのではなく、「今の自分の生活で本当に続けられるか」を一つずつ確認し、現実的に通える環境を整えた上で通学をスタートさせました。

通学後に直面した現実:時間との戦い

実際に通学が始まると、想像以上にやることが多く、忙しい日々が続きました。

  • 授業の予習や復習
  • 課題の準備
  • マルシェやボランティアへの参加

これらに加えて、日々の家事や育児もあります。

正直、時間の確保は大変でした。でも、卒業したら介護美容一本でやっていくと決めていたので、迷いはなかったです。

楽ではなかったからこそ、「なぜここに来たのか」という原点を何度も思い返しながら、毎日奮闘していたといいます。

それでも続けられた理由:周りの支えと覚悟

宮崎さんが忙しい日々の中でも学びを続けられた理由のひとつが、週1回の通学という無理のないペースと、振替制度の存在だったといいます。

子どもの面倒を親にお願いしたり、夫が休みの日には協力してもらったり。あとは授業も振替ができたので、周りの協力を得ながらなんとか通えた感じですね。

生活に合わせて調整できたことで、途中で諦めずに学び続けることができました。

そして、もうひとつの大きな支えは、宮崎さん自身の覚悟です。

いい意味で、学費が安くないですよね。だからこそ、これだけ費用も時間も費やしたから、絶対に無駄にできないという気持ちも原動力になっていたと思います。

時間もお金もかけて選んだ道だからこそ、簡単に諦める選択肢がなかった。
その覚悟が、忙しい日々を乗り越える大きな力となっていました。

そして宮崎さんは、介護美容研究所で学んでよかった点を、次のように整理しています。

介護美容研究所で学んでよかったこと
  • 介護知識ゼロから専門性をもって現場に立てるようになった
  • 授業・実習で“人の変化”をしっかりと見る視点が身に付いた
  • 同じ想いを持つ仲間と出会えた
  • 個別面談やフォローがあり、不安を抱え込まずに学べた

不安や大変さがあったからこそ、その先に得られた学びや自信は、現在の活動の基盤となっています。

卒業後すぐ独立しなかった理由|「現場を知る」という戦略

多くの人が気になるのが、介護美容研究所を卒業したあとの進路です。

「卒業したら、すぐに独立しないといけないのかな?」
そんなふうに感じる方もいるかもしれません。

もしあなたが同じ立場だったら
「まずは現場を知ってから動き出したい」と思うか、「思い切って独立に踏み出したい」と思うか——。
きっと、迷いながら考えるのではないでしょうか。

宮崎さんが選んだのはすぐに独立するのではなく、まずは週2~3日の勤務で介護職として施設に入職する道でした。
まずは、現場を知ることを最優先に考えたものでした。

介護職のイメージは、正直『大変・体力的にきつい』だったんですけど、とりあえずやってみたいという気持ちがあったんです。この先、営業するにあたって、介護職はやっている方がプラスになると思ったので挑戦しました。

介護美容を仕事として広げていくためには、現場で働く職員の気持ちや現場を理解することが大きな強みになると考えました。
そして、B&Cキャリアパークを利用して介護職に転職する選択をしましたが、介護職は初めての経験ということもあり、不安も多かったといいます。

「もしかしたらやめてしまうかも…。」
そんな正直な気持ちをB&Cキャリアパークの担当スタッフに打ち明けたこともあったそうですが、献身的なサポートや全力で応援してくれる声に背中を押され、前向きに挑戦してみようという気持ちになれたといいます。

やってみたら、意外と『できる!』と思いました!

無理のない勤務日数だったこともあり、体力的な負担を抑えながら現場経験を積むことができました。
現場をしってから独立するという選択は、今後の宮崎さんの活動に大きくつながっていきます。

誰でも初めは緊張と不安で、同じように悩み迷うかもしれません。
ですが、宮崎さんのように少しずつ段階を踏むという選択もまた、介護美容を長く続けていくための、ひとつの現実的な道だといえるのかもしれません。

株式会社ミライプロジェクトの運営する、
人材紹介事業のサービス。
介護美容研究所の受講生や卒業生を、介護美容を導入したい介護施設へ紹介する事で、介護現場の人材不足の解消や、保険外サービス導入のサポートに取り組んでいます。

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介護職を経験して実感した「介護美容の必要性」

宮崎さんが職場で主に担当していたのは入浴介助でした。

お風呂を出たあとに肌や爪の状態を確認しやすいので、改めて介護美容必要なものだと再認識することへとつながりました。ちゃんとクリームも塗ってあげたいし、爪もケアしてあげたいと、より一層そういう気持ちにもなりましたね。

午前中に入浴介助、午後は身だしなみのケアを含めた介護美容の時間を設けてもらえる環境もありました。
月2回「ビューティーデイ」としてネイルやハンドケアを行う機会もあり、利用者の表情が変わっていく様子を間近で感じることができたそうです。

最初は、介護美容をやらせてもらえない可能性の方が高いのかなと思っていたんです。

施設長さんの考え方や現場の人員体制にもよると思うんですけど、実際には、介護美容を導入したいと考えている施設の方が多い印象でした。

宮崎さんは介護美容を行っていない時間は、「何でもやります」と積極的に他の職員のサポートに回ることを意識していたといいます。
周囲との関係づくりも、介護職として介護美容を続ける上で大切なことだと実感していました。

契約はすぐに増えない―それでも確実に広がった理由

契約数が10施設いくまでは結構時間がかかったと思います。

常に『介護職をやっている方と繋がりがありませんか?』と言っていましたね。

卒業後すぐに、順調に契約が増えていったわけではありません。
スタート時点では契約はほとんどなく、これからどう広げていくかを模索する日々が続いていました。

最初からうまくいかなくても、決してそれは特別なことではありません。
むしろ多くの人が同じところで立ち止まり、悩むものです。

「思うように進まない」
「結果が見えなくて不安」
もしあなたが今、このように感じていたとしても、それはごく自然なことです。

そこで、宮崎さんが大切にしていたのが、人とのつながりをつくることでした。

  • 交流会への参加
  • 介護美容をやっていることを公言し続ける
  • 紹介してもらった施設で信頼を積み重ねる

特別な近道があったわけではなく、縁のあった施設で誠実に向き合い信頼を得る。
気が付けば予定が少しずつ埋まりはじめ、活動を始めて半年経った頃には、一気にスケジュールが埋まっていったといいます。

そして、現在では約25施設と契約を結ぶまでになりました。
結果が出るまでに時間がかかるのは、それだけ信頼を一つひとつ積み重ねている証でもあります。

この結果だけを見ると、「ハードルが高そう」と感じてしまうかもしれません。
けれど宮崎さんも、最初からこの形を目指していたわけではありませんでした。
まずできるところから小さく始めて、生活に無理のない形を探しながら、少しずつ仕事の幅を広げていきました。

すぐに結果が出なくても、行動を止めないこと。
その積み重ねが、今の安定した活動につながっていると宮崎さんは振り返ります。

今後の展望:介護美容のその先へ

宮崎さんは、介護美容を提供する中で、現場から寄せられる声にも耳を傾けています。

信頼関係もあると思うんですけど、『一緒に出かけてほしい』『できないことを手伝ってほしい』というお声は多いです。

介護美容をきっかけに、そうした声にも答えられる存在でありたいと考え、より幅広い介護保険外サービスの展開も視野に入れているといいます。

また、宮崎さんも卒業後に悩んだ経験があるからこそ、「どうしたらいいかわからない」と立ち止まっている人に向けて、オンラインでのお悩み相談も行っていきたいと語ります。

そして、もう一つの大きな目標が、契約数を50施設へと増やすことです。

この数は無理ではないなというところまで現状きていますし、それだけ施設数が増えると業務委託という形で人員が必要になってくるので、そこも増やしていきたいと考えていきます。

『私たちに任せれば間違いない』と、一緒に活動するメンバー全員が安心して任せてもらえて、百貨店でのホスピタリティも感じてもらえるように、今後徹底していきたいと考えています。

長年、百貨店で培ってきたホスピタリティを、介護の現場にも届けていく。
宮崎さんの想いは、これからさらに形になっていきそうです。

宮崎さんからのメッセージ|「迷っているなら、一歩踏み出して」

介護美容がまだ広く知られていない中で、道を切り拓いていくことには不安がつきものです。
それは、宮崎さんも同じでした。

介護未経験からのスタート
子育てと学びの両立
契約がなかなか増えない時期

迷いながらも、立ち止まらずに行動を続けてきたからこそ、今の宮崎さんがいます。

やってみたら見えてくるものがたくさんあります。やらなかったら見えない景色なので、ちょっとでもやりたい気持ちがあったら挑戦してみた方がいいと思います。

実際に、不安の中に身を置きながら、一歩ずつ進んできた宮崎さん。

迷いながらでもいい、完璧じゃなくてもいい——。
その言葉の端々からは「完璧じゃなくても進んでいい」ということが伝わってきます。

まとめ

介護美容を仕事にするには、決まったやり方はありません。
学び方も、働き方も人それぞれです。

宮崎さんも、子育てとの両立や卒業後の進路、すぐに結果が出ない現実と向き合いながら、その時々で悩みながら、「今の自分にできる選択」を重ねてきました。

最初から自信がなくてもいい。
遠回りに見える道でもかまいません。

大切なのは「私はどうだろう?」と一度立ち止まり、自分の生活や価値観に合った一歩を探してみることです。

その小さな積み重ねがやがて、「これでよかった」と思える未来につながっていきます。
その一歩を踏み出すタイミングは、ほかの誰でもない、あなた自身が決めていいのです。

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