介護の現場に美容の風を| ビューティーケアワーカー新迫さんが目指す未来
介護施設に入居すると、「おしゃれはもうできない」「美容は贅沢なもの」——そんな言葉を、どこかで耳にしたことがあるかもしれません。
けれど本当は、年齢を重ねても、介護が必要になっても、人は「自分らしく、美しく生きる権利」があります。
その想いを形にしているのが、介護美容研究所の卒業生でビューティーケアワーカーの新迫さんです。新迫さんは、勤務する介護施設で美容プロジェクト「はらっぱBEAUTY」を立ち上げ、今年で3年目を迎えました。利用者だけでなく、職員、家族、そして地域までもを巻き込みながら、介護の現場に新しい風を吹き込んでいます。
今回は、そんな新迫さんのこれまでや今後の目標についてお話を伺いました。

現在の活動:「はらっぱBEAUTY」が現場にもたらす変化

現在、介護職員として働く新迫さんは、「はらっぱBEAUTY」という名前で職場の利用者に、日常に寄り添う美容の時間を継続的に届けています。また、職場だけにとどまらず、地域とも連携してイベントを開催するなど、精力的に活動をしています。

前の施設長が「はらっぱBEAUTY」と名付けてくれて、今年の8月で3年目を迎えました。
では、新迫さんが展開する「はらっぱBEAUTY」では、どのような活動をしているのでしょうか。
- 毎月22日を「美」とかけて美容ケアを開催
美容ケアを定期的に行い、利用者・職員の意識づけを促進。 - NIGHT BEAUTY(ナイトビューティー)
夜間にリラックスケアを行い、睡眠効率や安眠を促す。 - MEN’S BEAUTY(メンズビューティー)
男性入居者や職員にも美容を体験してもらう機会を創出。 - 美容外出支援
利用者を化粧品店などへ案内し、店舗での買い物や体験を楽しむ支援。カウンター体験や撮影会も実施。 - 地域との連携
地域包括支援センターと協働し、「認知症カフェ」「体操教室」などでも美容を取り入れた活動を提供。 - 撮影会
他のケアビューティストとも協力し、撮影会を開催。
介護施設で美容を取り入れることは、利用者のQOL(生活の質)を高めるケアにもつながります。 施設のフロアの一角で開催される美容の日は、まるで外出気分を味わえる特別な空間となり、利用者の楽しみを生み出しています。
また、美容ケアを継続していくことで、いつの間にか他の職員や外部とも協力し合う雰囲気が生まれ、介護と美容の垣根が少しずつ消えていきました。
新迫さんは、「はらっぱBEAUTY」での活動を通して、介護美容を施設や地域に深く浸透させているのです。
「綺麗じゃなくなるのは嫌」:新迫さんが現場で感じた違和感と葛藤

新迫さんが介護の現場に入ったのは10年以上前のこと。
そこで感じたのは、誰もが綺麗でいたいという気持ちが、現場の忙しさや固定観念の中で置き去りにされているという現実でした。

介護の仕事を始めたときに、髪がギシギシになるようなリンスインシャンプーとか、化粧水も安ければいいみたいなものしかなくて。『介護施設ってこんな感じなの?』というショックが大きかったです。

利用者さんをお風呂に入れて、少し髪を整えてあげるだけでも、すごく喜んでくれるけど、実際は整容は飛ばして終わりというのが多くて。自分はこういう風にはなりたくないと、まず思いました。
そんな時、職場にアロマトリートメントを施術しにくる外部スタッフの存在を知り、新迫さんは「いつか、あの人のようになりたい」と思うようになったといいます。
介護美容研究所との出会い:ビューティーケアワーカーへの第一歩

2016年、新迫さんは体調を崩したことをきっかけに、現場から本部へと異動しました。運営管理や事務作業、稼働率の数字を追う日々の中で、レクリエーション内容の見直しを行っている際に、「従来のレクリエーションに利用者やスタッフは本当に満足しているのか?」と、疑問に思います。

今あるレクリエーションが好きな人もいると思うので、それはそれでいいんですけど。傍から見ると、みんな楽しくなさそうというか…。
そんなある日、何気なく「介護 美容」とネットで検索していたところ、偶然ヒットしたのが介護美容研究所でした。

『何これ?』と思って見ていたら、これが私の探していたものだと思って、すぐに電話をかけて資料も取り寄せました。

その時は、入学をお断りしたのですが、説明会を担当してくれたスタッフさんから『困ったことがあれば連絡くださいね』と親身に寄り添ってくれて、すごく驚きました。その後、何度かレクリエーションのことでやりとりさせてもらいました。
一度は入学を見送りましたが、担当スタッフの言葉も支えとなり、その後も介護美容への想いが消えることはありませんでした。
そして、2021年。ずっと待ち望んでいた介護美容研究所への入学が決まりました。

職場にも『学校に通いたい』と伝えました。まぁ、先に決めちゃってたので、全部事後報告なんですけど(笑)。

やりたいことはやらなきゃだめかなと思って!
仕事と両立しながら学ぶ日々。ネイルやエステなど、これまで触れてこなかった技術を学びながら、美容ケアで人の心を動かすことができると、新迫さんは実感していきました。
職場でも介護美容のレクリエーションを導入し、美容ケアを行っていった新迫さんですが、介護美容を本格的に実践するには、やはり現場へ戻るしかないと強く感じたともいいます。

現場復帰と「はらっぱBEAUTY」の誕生

2022年。介護美容研究所を卒業後、「現場に戻りたい」「介護美容を広めたい」という想いを抱えていた新迫さんは、前職を退職し、現在勤めている施設へ転職を決めます。

面接の時から、介護美容を広めたいという想いを伝えました。当時の施設長も、そういうことが好きな方だったので、受け入れてもらえました。
こうして誕生したのが、「はらっぱBEAUTY」です。

せっかくの美容の日だから、自分たちも身だしなみに気をつけていこうと、服装も意識するようにしています。美容師さんがダサかったら『えっ…?』と思うのと一緒で。そうすると、利用者の方から『あら、あなたどこの人?』と声をかけられたりしますね。
自ら服装や身だしなみを意識して、美容ケアのスタッフとしての印象を与えたり、施術場所も日常とは異なる空間を演出できるよう工夫して、日々、利用者に美容ケアを提供しています。
ただ、自分のやりたいことを形にするのは、簡単ではないとも新迫さんはいいます。

やっぱり、周りの理解がないと、いくらやりたいと言ってもなかなか難しいところはありますよね。最初は手探りだったんですけど、ここ最近やっと根付いてきたというか…。
介護美容を”ただ自分のやりたいこと“で終わらせず、職場全体の理解と協力を得ながら少しずつ形にしていく。そんな地道な努力の積み重ねがあったからこそ、「はらっぱBEAUTY」は3年経った今も続いているのです。
今後の目標:ビューティーケアワーカーという職域を目指して

新迫さんが介護美容研究所に通っていた頃、世の中はコロナ禍真っ只中でした。感染対策などで外部の人が施設に入りにくくなった状況を目の当たりにし、施設職員が介護美容の知識や技術を持っていれば、どんな状況でもケアが提供できると感じました。

PT(理学療法士)やOT(作業療法士)のように、施設に一人ビューティーケアワーカーがいれば、また制限されるようなことが発生しても、なんとかできると思うんです。
美容を通じて高齢者の心と生活を支える専門職として、ビューティーケアワーカーが当たり前にチームケアの一員として認められるようになることが、新迫さんの大きな目標です。

今は美容ケアをするとき、毎回装飾をして、荷物を出したりしまったりを繰り返してやっているんですけど…。いつかはビューティー部屋というか、専用の施設をつくりたいですね。
美容が特別なイベントではなく、ケアの一部として自然に存在する日常になるように——。新迫さんの挑戦は、これからも多くの人の心を動かしていくでしょう。
まとめ
美容の力で笑顔を取り戻す利用者、協力し合う職員、そして変わっていく施設の空気。
新迫さんの挑戦は、まさに介護の現場を幸せにする改革そのものです。
これからの介護では、身体だけでなく心のケアが欠かせないものになってきています。
「介護美容がある施設」が選ばれる時代が、すぐそこまで来ているかもしれません。
人が最後まで自分らしく生きるために——。
新迫さんの情熱は、これからも多くの人を笑顔に変え、介護美容が身近にある未来を照らし続けていくでしょう。
介護美容を学ぶなら専門スクールがおすすめ

介護美容研究所は、高齢者向けのヘア・メイク・ネイル・トリートメントなどの施術技術を学ぶことができるプロスクールで、卒業後はケアビューティストとして活躍することができます。
現在、東京校・横浜校・大宮校・名古屋校・梅田校(大阪)・心斎橋校(大阪)・福岡校の7拠点で開校しており、これまでに2,900名以上の卒業生を輩出しています(2025年10月現在)。
実践的なスキルを学ぶ現場実習のほか、卒業後の転職サポートも提供しており、学ぶだけでなくキャリアを築くためのサポートが充実しています。
介護美容研究所では、介護美容に興味を持ってくださった方を対象に、カリキュラムの内容や講座料金などの詳細を記載したパンフレットを無料でお送りしています。
興味のある方は、まずは無料で資料をご請求ください。


