資生堂 化粧療法× ケアビューティスト 米田美穂さんが届けた“介護現場の新しい価値”美容教室

大阪・阿倍野の特別養護老人ホーム 阪和苑で、資生堂ジャパンと介護美容研究所の卒業生 米田美穂さんによる“美容教室”が開催されました。参加者のみなさんの表情が少しずつほぐれ、会場の空気がふわっと明るくなる——その瞬間を何度も目撃。この記事では、誕生の背景から当日の様子、そして次の展開までを丁寧にお届けします。
【誕生の背景】 資生堂の学びと、介護美容の掛け算で生まれる“持続可能な美容教室”
きっかけは、2024年6月。米田さんが資生堂の「化粧セラピスト」資格を取得したところから物語は動き出しました。講座の受講中、資生堂のソーシャルエリアパートナーと“訪問美容”の可能性で意気投合——「だったら現場でやってみよう!」と話が一気に前進します。
実践の舞台に選ばれたのは、米田さんが日頃から通っている特別養護老人ホーム・阪和苑(ケアハウス阿倍野)。施設の空気や導線、参加者の生活リズムまで把握している“顔の見える関係”があるからこそ、初めての教室でも安心してトライできる——そんな“土台”がすでに整っていました。

背景にはもう一つ、「介護の現場理解×化粧療法のメソッド」という強い掛け算があります。介護美容で培ってきた安全配慮・コミュニケーション・運営設計と、資生堂が長年取り組んできた香り・触れ合い・身だしなみによるQOL向上の知見。この二つが出会うことで、単発のイベントではなく“教室型”という続けられる形が見えてきました。
準備段階では、「誰が・どのテーブルで・どのステップを支えるか」を細かく設計。講師は米田さん(CRESTAGE)と資生堂ジャパン・森川さん、テーブルにはサポートスタッフを配置し、学びを現場で安全に再現するための“型”づくりに、双方のノウハウが惜しみなく注がれています。

さらに、阪和苑(ケアハウス阿倍野)はもともと地域の高齢者が集う交流の場。ここで成功モデルをつくれば、施設内にとどまらない開かれた教室へと広げられる——そんな将来像まで見据えてスタートしました。
資生堂の化粧療法とは? 香り・触れ合い・身だしなみでQOLを上げる

資生堂が長年積み上げてきた「化粧療法」は、香り・触れ合い・身だしなみという日常の行為をていねいに設計し直し、心身のコンディションと生活の質(QOL)を高めるアプローチです。具体的には、香りで気分をほぐし、触れ合い(タッチ)で安心感と覚醒を促し、身だしなみ(メイクや整容)で自己同一感・自己効力感**を支えます。この取り組みは、心の活性化や表情筋・手指の運動、さらには口腔機能のサポートなど、シニアの暮らしに直結する多面的な効用が期待されている点が特徴です。単発の“映える”イベントではなく、継続して取り組むことで効果を育てるという設計思想が、資生堂の化粧療法の核にあります。
シンプル3ステップで、初めてでも安心
- Step1:ストレッチ … ハンドケアと香りでリラックス。緊張をほぐして心身をやわらかく。
- Step2:スキンケア … やさしく唾液腺を刺激し、顔まわりのめぐりを促す。表情づくりの土台に。
- Step3:メイク … 年齢や肌の状態に合わせた“いきいきメイク”。無理なく続けられる工夫が満載。

講師はCRESTAGE・米田美穂さん、資生堂ジャパン・森川玲子さん。各テーブルにはサポートがつき、初めての方でも安心して楽しめる設計でした。
“笑顔の連鎖”が会場を包むまで

スタート直後は、米田さんにも参加者にも少し緊張の色。けれど、明るい声掛けと寄り添うサポートで空気が徐々にほぐれ、笑顔・会話・小さな冗談がテーブルごとに生まれていきます。終盤には「写真欲しい!」「お出かけしたい!」と前向きな言葉が自然と飛び出すほど。“身だしなみは自分らしさを呼び戻すスイッチ”であることを、場の変化が雄弁に語っていました。
【米田美穂さん】 “体が覚えている所作”が、鏡の前で自然によみがえる

化粧品を前に、まるで昔の朝支度に戻ったかのように、皆さんの指が迷いなく動いていく——その場面を、米田さんはこう振り返ります。

今回の美容教室にご参加くださった皆さまは、施設に入所されてからお化粧の習慣がなくなったという方ばかりでした。それでも、鏡を前にすると自然と手が動くんです。94歳の方も、眉を整えたり口紅を塗ったりと、その仕草を体がしっかり覚えておられました。
メイクのステップが進むにつれ、皆さんの表情がどんどん柔らかくなり、お隣同士で笑い合う姿も。
教室の終わりには『彼氏作らなあかん』『ハイヒールでお出かけしたい』なんて声も飛び交い、会場がまるで女子会のような明るい空気に包まれました。
お化粧を通じて“自分らしさ”を取り戻す力を、改めて感じた時間でした。


いくつもの症例と確かなエビデンスをもとに世界で展開されている資生堂さんとご一緒できたことで、介護現場における美容の可能性にさらに確信と自信を持つことができました。
米田さんの言葉どおり、現場の実践力 × 体系化された化粧療法の掛け算は、ただ“きれいにする”だけで終わらせません。安全配慮、進行設計、道具選びまで——細部の「再現性」が担保されているからこそ、続けられる教室として根づく手応えがありました。

阪和苑(ケアハウス阿倍野)さんは地域の方が集う交流の場でもあります。ここで継続的に美容教室を開催し、入居者の方だけでなく地域の高齢者にも開いていきたい。施設と地域をつなぐ“架け橋”として、美容であたたかいつながりを広げていきます。
次の開催に向けて、米田さんは「今日の好きをひとつ持ち帰る」という合言葉を大切にすると話してくれました。小さな“好き”の積み重ねが、生活の張りや外へ出るきっかけ**を生み、やがては地域の交流にもつながっていく——そんな未来像が、この日の会場にははっきりと見えていました。

【資生堂ご担当者コメント】 学びが“現場で生きる”瞬間を

資生堂ジャパン株式会社 ソーシャルエリアパートナー 森川 玲子さん

米田さまの認定取得後、はじめての実践の場になりました。学ばれた内容がしっかり生かされ、工夫されていたことを嬉しく思います。化粧療法は継続することで心身の健康維持やQOL向上につながるもの。熱意ある実践者が増えることで、より多くのシニアの健康で美しい暮らしに貢献できると考えています。
コメントの核心は、“続ける”ための仕組みづくり。単発で終わらず、同じ品質で何度でも届けられるプログラムへ——そこに資生堂の役割意識がにじみます。

米田さまのように熱意を持って取り組んでくださる方が一人でも多く増えることで、より多くのシニアの皆さまが健康で、元気で、美しく過ごしていただける社会の実現につながると考えております。
現場での“成功体験”が、次の実践者を呼び込み、地域に根を張っていく。メソッド(資生堂)×現場(ケアビューティスト)×受け皿(施設・地域)の三者が噛み合うことで、教室は継続可能な地域資源へと育ちます。今回の取り組みは、その好循環の第一歩になりました。
【施設長コメント】 「美容が“普通”にある社会に」

特別養護老人ホーム阪和苑/ケアハウス阿倍野 施設長 小西 雅弘 さん

ご入居の方に美容を通じて楽しんでいただき、健康を保ってほしい。その思いから米田様のご提案を受けました。病気や障がいがあっても普通の生活が送れることが大切だと考えています。友達と話す、映画を見る、外食をするのと同じように、美容を楽しむことが“普通”の社会になってほしい——そんな願いを込めています

普段はお化粧をされない方も、始まると真剣な表情の中に笑顔があふれ、お化粧は人を明るくし、楽しませてくれるものだと実感しました。『楽しかった!』『綺麗になった自分の写真が欲しい』という声もいただきました。ご協力いただいた皆さまに感謝しています
【今後の展開】 “教室型”を有償の継続レッスンへ

今回の手応えを受けて、米田さんは教室型の美容レッスンを有償で継続する準備を進めています。入居者さんはもちろん、地域の高齢者にも開くことで、**交流(つながる)/予防(ととのえる)/自己表現(らしさを楽しむ)**がめぐる拠点に——“場”そのものを育てていく構想です。
資生堂の化粧療法という確かなメソッドと、ケアビューティストの現場力、施設・地域の受け皿が合わさると、単発のイベントは続けられる暮らしの習慣に変わります。今日見つけた「好きの色」をまた次回も。今日感じた「できた」を、となりの人へ。そんな小さな循環が広がるほど、美容は“見た目以上”に、人の時間と関係性をあたためるケアになります。
阪和苑で生まれたこの教室は、介護美容の将来性を具体的に示す実例になりました。ここから先は、回数を重ねるたびに地域の風景が少しずつ変わっていくはずです。ケアビューティストの新しい価値を、現場から——そして、あなたの街から。

介護美容を学ぶなら専門スクールがおすすめ

介護美容研究所は、高齢者向けのヘア・メイク・ネイル・トリートメントなどの施術技術を学ぶことができるプロスクールで、卒業後はケアビューティストとして活躍することができます。
現在、東京校・横浜校・大宮校・名古屋校・梅田校(大阪)・心斎橋校(大阪)・福岡校の7拠点で開校しており、これまでに2,900名以上の卒業生を輩出しています(2025年10月現在)。
実践的なスキルを学ぶ現場実習のほか、卒業後の転職サポートも提供しており、学ぶだけでなくキャリアを築くためのサポートが充実しています。
介護美容研究所では、介護美容に興味を持ってくださった方を対象に、カリキュラムの内容や講座料金などの詳細を記載したパンフレットを無料でお送りしています。
興味のある方は、まずは無料で資料をご請求ください。


撮影協力
特別養護老人ホーム阪和苑様(大阪・阿倍野)
http://www.tezukayama.or.jp/hanwaen/