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高齢者の肌トラブルを防ぐ!夏のスキンケアと今すぐできる対策まとめ

中世古祐里

介護施設やご家庭で、こんなお悩みはありませんか?
「最近、ご利用者さんがかゆがっているけど、どうしたらいいんだろう」
「夏場のスキンケアってどうするのが正解?」
「家族の肌が赤くなっていて心配…。」

日本の夏は高温多湿なため、不快感を抱える方も多いでしょう。特に高齢者は、皮膚のバリア機能が低下しているため、湿気や汗による肌トラブルが起きやすくなります。
(参考文献:石巻港湾病院2階病棟スタッフ研究チーム,1999,「高齢者のスキンケアの見直し」1-3,(2025年7月18日取得,https://kmcb.or.jp/archive/training/pdf/case/godo4/K_godo4_1111_09.pdf)谷口珠実,2016,「暑い季節は肌を健やかな状態に保つスキンケアが大切」,排泄ケアナビホームページ,(2025年7月18日取得),https://www.carenavi.jp/ja/expert/vol8.html)

ですが夏の肌のトラブルも、日常のちょっとしたケアで予防・改善することが可能です。

今回は、夏に多い高齢者の肌トラブルの原因と対策、介護施設や自宅で簡単に取り入れられるケア方法などについてご紹介していきます。

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湿度と高齢者の肌トラブルの関係

暑い夏の時期は、気温よりも「湿度」が肌に大きな影響を与えます。日本の夏は湿度が70~80%以上に達する日も多く、皮膚にとっては「常にぬれた状態」が続いているような感覚になることも。汗が乾きにくく、皮膚に留まったままとなることで、高齢者の肌トラブルの原因になってしまいます。

高齢者の皮膚は乾燥しやすいのに、蒸れる?

特に夏は高齢者にとって、乾燥と蒸れの両方の悩みが現れる時期です。湿度が高く、蒸れによる不快感や皮膚トラブルのリスクが高まります。
一見すると、「湿度が高い=肌はうるおう」と思いがちですが、高齢者の場合は違います。高齢者の皮膚は加齢に伴い皮脂や汗の分泌が減少し、肌のバリア機能が低下しています。外からの刺激に弱く、汗や湿気でふやけた状態がかえって皮膚を傷つけやすくしてしまうのです。
(参考文献:坪井 良治,2024,「高齢者・乾燥肌のスキンケア:皮膚の洗浄と保護・保湿のバランス」,花王プロフェッショナル・サービスホームページ(2025年7月18日取得,https://pro.kao.com/jp/medical-hygiene/gakujutsu/hygiene-solution/no32/002/)

夏に多い高齢者の肌トラブル例

  • 汗疹(あせも)
    汗をかいたまま放置すると汗腺が詰まり炎症を起こします。その結果、皮膚が赤くブツブツになったり、ヒリヒリとした痛みやかゆみを感じることがあります。
  • 汗かぶれ
    汗に含まれる塩分や老廃物が刺激となり、長時間肌に触れると皮膚を刺激し赤みやかゆみを引き起こすことがあります。下着の縫い目やゴム部分が皮膚とこすれることで、悪化してしまうことも。
  • 湿疹・かゆみ
    通気性の悪い下着や寝具で長時間過ごしていると皮膚が蒸れてしまい、湿疹やかゆみといった症状が発生します。高齢者は自分の不快感に気付きにくかったり、うまく伝えられず我慢してしまうことも多いため、こまめに皮膚の状態を観察することが大切です。
  • 皮膚剥離・かさぶた
    高齢者の皮膚は非常に薄く、少しの摩擦でも簡単に剥けてしまいます。湿った皮膚はこすれることでめくれ、傷ができやすくなります。特に介護が必要な方は褥瘡(床ずれ)にもつながりやすいので、日々のケアと早期発見が重要です。

特に、背中や首、ワキ、膝裏など“汗がたまりやすい部位”を重点的にケアしていくことが大切です。
(参考文献:日本皮膚科学会ガイドライン,2020,「皮膚瘙痒症診療ガイドライン 2020」,日本皮膚科学会ホームページ,(2025年7月18日取得,https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/souyouGL2020.pdf)俵田 智佳子/伊藤 エリ/杵渕恵美子/落合美恵子,2015,「皮膚水分量に着目した適切な皮膚保湿剤の選択」(22025年7月18日取得,http://www.agano.or.jp/agano-hp/kangobu/pdf/kenkyu_jisseki_H27_3.pdf)

紫外線対策も忘れずに!

高齢者の肌は紫外線にも敏感です。以下の日焼け止めの選び方や塗り方を意識しながら、炎症や乾燥から高齢者の肌を守りましょう。

チェックポイント!
  • SPF30、PA+++程度の日焼け止めで効果は十分(強すぎるものは刺激に)
  • ベタつきにくいミルクタイプやスプレータイプが使いやすい
  • 外出30分前に塗り、2~3時間おきに塗り直すと効果的

入浴・汗拭きの工夫

肌トラブルを防ぐ基本は清潔の維持です。しかし、高齢者の中には入浴頻度が限られていたり、自力でシャワーを浴びるのが難しい方も多いでしょう。夏の暑い時期、特に意識したいのが「汗を溜めない・拭き取る」ことです。

毎日入浴できないときの対策

  • 朝の汗はなるべく早めに拭く
    朝の起床後は寝汗が見られる方も。寝汗を乾かしてしまうと、布団やパジャマが臭う原因に。乾く前に拭くことで雑菌の繁殖を防ぎます。
  • 蒸しタオルでの全身拭き
    温かい濡れタオルで首元・ワキ・膝裏・背中などをやさしく拭いてあげましょう。身体の不快感を軽減するだけでなく、リラックス効果や血行促進も期待できます。
  • 部分浴(足浴・手浴)でのリフレッシュ
    血流促進や気分転換にもなり、皮膚の健康維持にもなります。

タオルの素材にもこだわって

高齢者の肌への摩擦は大敵です。汗を拭く際は、ガーゼややわらかい綿素材のタオルを使うと安心です。使い捨てのボディシートは手軽な半面、アルコール成分が入っていると肌を乾燥させてしまうため、成分表示をよく確認するようにしましょう。

保湿と制汗のバランス

「湿気が多い季節に保湿?」と驚く方もいるかもしれませんが、実はこれが高齢者の肌トラブル予防のカギです。

暑い夏には“うるおいケア”

湿気で汗ばんでいても、皮膚そのものは乾燥していることが多いのが高齢者の特徴です。特に暑い夏場に空調を頻繁に使う介護施設では、肌の水分が奪われやすく、かえってかさつきが進んでしまいます。

おすすめの保湿ケアには以下のようなものがあります。

  • 入浴・清拭後すぐに保湿剤を塗る(肌が乾燥する前がベスト)
  • 高齢者には刺激の少ないスキンケア用品を使用する
  • スプレータイプの保湿剤は蒸し暑い季節でも快適に使える
刺激の少ないスキンケア用品とは?

アルコール、パラベン、合成香料、着色料、鉱物油といった添加物が極力含まれず、低刺激処方で作られているもの。また、保湿成分や肌のバリア機能をサポートする成分が配合されているものが推奨されています。

制汗剤は使ってもいい?

清涼スプレーやパウダー入りシートは汗を抑えたり肌のべたつきを軽減するのにお手軽で夏場の快適さを保つために効果的です。しかし、肌が弱い高齢者にとっては「乾燥しすぎて皮膚が割れる」「かえってかゆくなった」などトラブルの原因になることもあります。
制汗剤を使うときは、汗を抑えることばかりに注目するのではなく、肌の状態をよく観察し保湿とのバランスを意識するとよいでしょう。

特に注意したいアイテム
  • メントール入りローション
    清涼感が強く刺激となり、皮膚の乾燥を招く場合があります。
  • アルコール濃度が高いウェットシート
    頻繁に拭いてしまうと、必要な皮脂まで取り除き、肌のバリア機能を低下させる可能性があります。
  • 制汗パウダー
    大量に使用したり摩擦で、皮膚が傷ついたり、毛穴を詰まらせる原因になります。

水分補給の重要性

皮膚の水分保持は、体内の水分量とも深く関わってきます。汗やエアコンで水分が奪われやすい夏は、こまめに水分を取ることで、内側からもスキンケア効果が期待でき、乾燥対策になります。

また、水分補給は脱水症や熱中症といったリスクを防ぐことにもつながります。高齢者は喉の渇きを感じにくいため、声かけも忘れずに行っていきましょう。
(参考文献:環境省,2025,「熱中症環境保健マニュアル」,(2025年7月18日取得,https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sg_pcm/R0603/ref04.pdf)

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症状が悪化した時の対処と受診目安

軽い汗疹やかゆみであれば、清潔を心がけた基本的なケアで改善が期待できますが、下記のような症状が見られる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

  • 数日たっても症状が改善しない
  • 傷みや強いかゆみ、腫れ、発熱、水泡がみられる
  • 膿が出たり、潰瘍化したり、同じ症状を繰り返している

放置してしまうと感染症や重症化のリスクもあるため、早めに対応するとよいでしょう。
(参考文献:渡辺晋一(監修),2025,「『発疹』とは?発疹の原因となる疾患を解説」,ヒフノコトサイトホームページ,(2025年7月18日取得,https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/)ユ野村祐輝(監修),2024,ユビ―病気のQ&A,(2025年7月18日取得,https://ubie.app/byoki_qa)

肌トラブルを防ぐ簡単にできるお手軽スキンケア

肌を清潔に保ち、うるおいを与えることが基本ですが、さらに“美容の工夫”をプラスすることで、高齢者本人の気分も前向きになります。

今日から始められる簡単ケア

  • かゆみの原因となる古い角質を落とす
    ガーゼを使った軽いふき取りで、古い皮脂をオフ。週1回程度でも十分効果があります。
  • 天然成分入りの保湿ミストを活用
    ラベンダーやカモミールなど、リラックス効果もあるミストは「気分を整える美容」としても好評です。
  • 見た目も涼しげなスキンケア用品を使う
    透明感のあるジェルや、冷感タイプの保湿ローションは「使いたい」「気持ちがいい」と感じてもらいやすく、習慣化につながります。男性にも人気の高いスキンケア用品です。
  • 軽いフェイスケアで血行促進
    ホットタオルを顔に数分あてたあと、保湿クリームを塗りながら目の周りやほお骨の下を、指先でやさしくほぐします。むくみの予防や、表情筋の活性化にも役立ちます。

ケアする側も気軽に続けられる工夫

難しい工程がなく、話しかけながらできる美容ケアは、介護の負担にもなりにくいため気軽に続けることができます。何気ないスキンケアが、高齢者にとっての「癒しの時間」になることも多く、信頼関係もより深まっていくでしょう。

毎日のケアで意識したいチェックポイント
  • 首・背中・脇・膝裏などの赤身、湿疹、かさぶた
  • 衣類が汗で湿っていないか
  • 肌が乾燥して白く粉をふいていないか
  • 「かゆい」「暑い」「痛い」などの訴えがあるか
  • ケア後に「気持ちがよかった」等の反応があるか

プロの手による美容ケアで安心・安全なスキンケアを

高齢者の年齢や体調によっては「スキンケアをするのが難しい」「顔や身体に触れるのが不安」という方も少なくありません。そんな時は、美容のプロを頼ってみるのも一つの手です。

例えば、介護美容を用いてケアを行うケアビューティストなら、肌の状態や季節に合わせた適切なケアを、ご本人の気持ちに寄り添いながら安心・安全に提供してくれます。

  • 香りや使用感に配慮したスキンケア用品の選定
  • 会話を楽しみながら行うボディトリートメント
  • ベッドの上でも行える施術
  • 椅子に座ったままでのスキンケア対応 など

見た目の清潔感を保つだけでなく、「他者との触れ合いによる癒し」や「自分を大切にする気持ちを思い出すきっかけ」にもなります。

近年、介護施設や在宅介護の現場でも美容ケアが取り入れられ始め、「気持ちまで明るくなった」「またお願いしたい」といったポジティブな声が多く聞かれるようになっています。特に、夏場は肌トラブルも起こりやすいため、定期的なプロのケアが安心感と快適さにつながります。

まとめ:肌と心を守る夏のスキンケア

夏の暑い時期に増える高齢者の肌トラブルは、湿気や汗だけが原因ではなく、「肌のバリア機能の低下」や「見過ごしてしまうこと」「間違ったケア」が重なって悪化することも少なくありません。高齢者の肌は繊細だからこそ、ほんの少しの配慮で大きな効果をもたらします。

介護する人にとっても、毎日のケアの中に“美容”を取り入れることで、相手の笑顔を引き出すだけでなく、自分自身も心が軽くなることがあります。
ぜひこの夏から、出来ることから少しずつ。肌も気持ちも整えるケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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現在、東京校・横浜校・名古屋校・梅田校(大阪)・心斎橋校(大阪)・福岡校の6拠点で開校しており、これまでに2,400名以上のケアビューティストを輩出しています(2025年4月現在)。
実践的なスキルを学ぶ現場実習のほか、卒業後の転職サポートも提供しており、学ぶだけでなくキャリアを築くためのサポートが充実しています。

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