〈1日の流れでわかる!〉在宅介護のリアルな生活と工夫

高齢社会が加速するなかで、「できるだけ自宅で家族と一緒に過ごしたい」と願う高齢者が増えています。そして、その想いに応えようと奮闘する家族の存在があります。在宅介護は、施設に頼らず、住み慣れた家で行う介護のかたち。けれど、その実情は想像以上にハードで、心身ともに負担が大きいのも事実です。
「在宅介護って、実際どんな感じなんだろう」「準備するものや工夫って?」「家族の負担はどう減らせる?」という声に応える形で、1日の生活の流れをモデルケースで紹介しながら、実用的な工夫や心の持ちよう、プロの力の借り方までをご紹介していきます。

介護の負担を軽減するための環境づくり

在宅介護をスムーズに行うには、”家の中の環境整備”がとても大切になってきます。たとえば、小さな段差でつまずいて移動が不便だったり、照明が暗くて転倒してしまったり。そんな”小さな困りごと”が、いつしか介護される側にも介護する側にも大きなストレスへと変わっていきます。
それを解消するには、介護される側・する側のどちらにとっても「動きやすく、安全な環境づくり」がポイントになります。
環境整備のポイントは次のとおりです。
- バリアフリー化
段差の解消や手すりの設置、滑りにくい床材への変更などで、転倒リスクを減らします。特にトイレ・浴室・玄関まわりは優先的に見直しましょう。 - 動線の確保
家具の配置を見直したり物を減らすことで移動中のつまずきや転倒を防ぎます介護者にとっても、スムーズに動くことができます。 - 照明の工夫
夜間の安全を守るための工夫も重要です。センサーライトや足元灯を設置することで、暗闇の中でのトイレ移動なども安心です。 - 見守りのための機器導入
動きを感知して知らせてくれるセンサーやカメラを活用すると、家族が別室にいて目を離す時間があっても安心できます。また、カメラを通して離れて暮らす家族も状況を把握しやすくなります。
こうした工夫は、日々の介護の負担を軽減するだけでなく、介護を受ける本人が自分でできることを増やし、安全かつ尊厳ある生活を支えることにも繋がります。
揃えておきたい!在宅介護グッズリスト

在宅介護では、便利な介護用品を上手に取り入れることで、毎日の介護の負担を減らすことができます。ここでは、実際に多くの過程で使われている「あるだけで楽になる」介護グッズをご紹介します。
- 介護用ベッド
背上げ機能や高さ調整ができる電動ベッドが主流になっています。移動・起き上がりの動作が各段になり、介護者の腰痛予防にも効果的です。 - ポータブルトイレ
夜間や、トイレまでの移動が難しい場合に重宝されます。本人のプライバシーを守りながら安全を確保できるほか、臭い対策や掃除のしやすさにも配慮した製品など種類はさまざまです。 - 歩行補助具
シルバーカーや歩行器など、筋力やバランスの低下に応じて選ぶことで、行動範囲を広げる手助けになります。転倒を防ぐためにも、専門家に相談しながら導入するのがおすすめです。 - 入浴補助具
滑りやすい浴室は、転倒事故が多い現場のひとつです。シャワーチェアや浴槽用の手すり、滑り止めマットなどを使って安全を確保します。 - 食事用エプロンや食器
食器は滑りにくく、持ちやすいものを選ぶことで、自分で食べる意欲を支えます。
エプロンはポケットのついているものや、使い捨てのタイプを選ぶことで、食べこぼしや食後の後片付けがぐっと楽になります。 - 防水シーツ
尿や便汚染からベッドや布団を守ってくれる便利なアイテムです。汚れたシーツの洗濯・交換の手間を減らし、介護者の負担を軽減してくれるアイテムのひとつです。 - 音楽付き人感センサー
特に、見守りには音楽付き人感センサーがおすすめです。音だけでなく光で行動を知らせてくれるものもあり、介護者が気づきやすくなります。 - その他にあると便利なもの
日々の介護内容を記録することで、体調変化の把握や通院時に役立つ「介護記録ノート」や、体温計や血圧計などの健康管理のためのグッズもあると安心です。
モデルケースで紹介:ある高齢者と家族の1日

ここでは、90歳の男性Sさんとその家族(主に60代の娘)による、リアルな在宅介護の1日をご紹介します。
基本的に身の回りのことが自分でできるSさんは要介護1。排泄と入浴には、付き添いや見守りが必要です。また、家族はSさんの筋力の低下とたまに見られるふらつき、多少の物忘れが気になっています。週2回のデイサービスを利用しており、その他の日は家族が自宅で介護を担っています。
▶ 7:00:起床・排泄介助
Sさんが起きると、設置された人感センサーが音楽を鳴らし、家族がすぐに気づける仕組みに。たまに歩行にふらつきが見られるものの、家の中での移動は特に問題がないため、時間があればトイレまでの移動は見守りのみ。外から声をかけ様子を確認し、必要があれば介助を行います。
▶ 8:00:朝食
食事は自力で可能なため、家族は調理と見守りを担当。食後の服薬確認も家族が行います。

食事をしたあとに『ご飯はまだか?』と聞かれることがあります。食べたことを忘れてしまうこともあるので、食後すぐに、”日付”・”時間”・”食事内容”を本人にノートに書いてもらい、あとから見返したときに『ちゃんと食事をした』という安心感を与えるように工夫しています。
▶ 10:30 散歩(デイサービスがない日)
家族が付き添って、近所を軽く散歩。外の空気を吸うことで気分転換にも。レンタルした車いすを一緒に押していき、散歩の途中で休憩がてら車いすに座ってもらうなど、無理をさせないよう配慮も。

元々お散歩が趣味なので、本人の好きな事を続けさせてあげたいと思い、なるべく毎日散歩に連れ出すようにしています。家の外にでて自然を感じることで、いきいきとした表情を見せてくれるのは嬉しいです。
▶ 12:00 昼食
朝と同様に自力摂取。家族が調理と見守りを担当します。
▶ 13:00 休憩
食後のリラックスタイム。Sさんはテレビを観たり昼寝をしたり。家族もこの時間を使って自分の家事や休息を取ります。
▶ 15:00 訪問往診・看護
時折、Sさんによる臀部や脚の痛みの訴えがあることから、訪問看護を利用し。また、病院まで長距離移動が難しいため、医師による往診も利用しています。
看護師によるヒアリングやバイタルチェックの他、フットバスを使用したフットケアを行ってもらうことも。

看護師さんや先生など、家族以外の方と話す機会があることで、気持ちの切り替えにもなっているのか、父も表情が明るくなったり、普段よりもよくおしゃべりをするように感じます。
▶ 17:00 休憩
訪問看護が終わったあとや、デイサービスから帰ってくるこの時間帯もSさんの自由時間。家族も夕食の準備や自分のことを、Sさんの見守りと並行しながら行っていきます。
▶19:00夕食
夕食も自力で摂取。就寝前の薬の確認も行います。
▶20:30 入浴
お風呂場は特に滑りやすく危険が潜んでいる場所なので、注意を払いながら介助していきます。

トイレとお風呂は一番プライベートな空間なので、”家族だから”といって必要以上に介入するのではなくプライバシーを守りながら、基本見守りのスタンスでそばにいるようにしています。

特に入浴の際には、私よりも20cmも背の高い父を介助するのは大変なので、訪問看護の際に入浴もお願いするなどして、減らせる負担はとことん減らすようにしています。
▶ 21:30 就寝
就寝前のトイレへと付き添ったあと、ベッドに誘導し、人感センサーをオンにして見守り体制に入ります。
▶ 深夜~早朝 トイレ付き添い(数回)
夜間も複数回トイレに起きるため、家族はその都度起きて付き添い。日中よりも負担が大きい部分です。
このような日常が続くなか、家族の身体的・精神的な負担をどう減らすかが、在宅介護の大きな課題となってきます。

誰でも初めての介護はわからないことだらけ。プロに相談したりサポートを受けながら行うのが大切だと感じています。在宅介護だからといって、全て家族だけでやろうとせず、無理をしないこと。必ず、自分を労う時間を定期的に設けるようにしています。
負担を減らすプロのサポート活用術

在宅介護は、家族だけで介護を抱え込む必要はありません。公的なサービスやプロのサポートを上手に取り入れましょう。
訪問介護
訪問看護では入浴・排泄・食事などの身体介助から、掃除・洗濯・買い物を含めた生活援助まで、柔軟に対応してくれます。最近では、専用の設備を持ち込んで浴槽の代わりに安全に入浴させてくれるサービスも充実しているため、要介護度が高い方にも安心です。
訪問看護
医療処置が必要な方や、在宅療養中の方には、訪問看護師による定期的なケアが、心身ともに心強い味方になります。
デイサービス
入浴・食事・レクリエーション・リハビリなどが受けられ、他者との交流が大きな刺激になります。介護者にとっても「休める時間」となり、心の余裕が生まれます。
ケアマネージャー
全てのサービスを適切に組み合わせるのに不可欠なのが、ケアマネージャーとの連携です。現状のニーズに合わせたケアプランを作成し、必要な介護サービスを調整してくれます。迷ったときはまず相談してみましょう。
+αの工夫で心にもゆとりを

在宅介護では、身体のケアと同じくらい、「心のケア」もとても大切です。
たとえば、訪問美容サービスを利用して、髪を整えたり、ネイルで手元をきれいにしたり。
鏡に映る自分が少し整っているだけで、「まだまだ元気でいたい」「人に会いたい」という気持ちが自然と湧いてくることがあります。
最近では、自宅にいながらプロの美容ケアを受けられる訪問美容サービスも増えてきており、その中心で活躍しているのが、介護と美容の両方の知識を持った専門家「ケアビューティスト」です。
介護の現場を理解し、ご本人の体調や気持ちに寄り添いながら、安全に美容ケアを提供してくれます。日々の介護に、ほんの少しの“おしゃれ”の時間を取り入れるだけで、ご本人の表情がパッと明るくなることも。ケアビューティストによる美容の力が、心にやさしい彩りを添えてくれます。
在宅介護を続けるためのメンタルケア

在宅介護をする家族の多くが抱えるのが「孤独感」と「罪悪感」。時には「自分だけが頑張っている」と感じてしまうこともあります。
そんなとき、役立つのが自分自身の心をケアする習慣をもつことです。以下のような工夫で、心の負担を軽減するとよいでしょう。
「介護をしない日」をつくる
週に1回、短時間でもいいので介護しない時間を意図的に作ることです。自分の趣味や休息、友人との時間につかうことで、心がリセットされます。
信頼できる第三者に相談する
家族のほか、信頼できる友人やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談をしてみましょう。「今こう感じている」と話すことは、メンタルケアの第一歩につながります。
介護に関する情報を「共有」する
介護は1人ではできません。家族内で介護記録を共有したり、支援者と連携を取ることで「自分だけが背負っている」という感覚を減らせます。
また、何かあったときに「自分しか知らない」状態を防ぐためにも、共有は欠かせません。
ポジティブな瞬間に目を向ける
たとえば、ふとした笑顔や「ありがとう」の言葉に気づけるようになると、介護そのものへの向き合い方が少しずつ変わっていき、心に余裕が生まれモチベーションを保つことができるでしょう。
「おしゃれ」や「美容」を通じた心のケア
訪問美容サービスのように、外部の人からケアを受ける機会は、本人だけでなく介護者の気持ちにも良い刺激になります。「きれいになって嬉しそう」「自分もホッとした」—そんな小さな体験が、介護生活の中に彩りを与えてくれます。
まとめ:リアルを知って備えよう
在宅介護は決して簡単なことではありません。ですが、「住み慣れた家で過ごす」という希望を叶えるために、今からでもできることがたくさんあります。
環境の工夫、道具の活用、専門職の力、そして心のケア。これらを組み合わせることで、無理なく、長く続けられる在宅介護がみえてきます。
そして、そんな日々の中で「趣味」や「おしゃれ」といった、ほんの少しの喜びが、大きな希望につながることもあります。
大切なのは、無理をしないこと。家族が元気であることが、介護を続けるための何よりの条件です。そして、備えることで「自分らしい介護」のかたちが見つかるかもしれません。
介護美容を学ぶなら専門スクールがおすすめ

介護美容研究所は、高齢者向けのヘア・メイク・ネイル・トリートメントなどの施術技術を学ぶことができるプロスクールで、卒業後はケアビューティストとして活躍することができます。
現在、東京校・横浜校・名古屋校・梅田校(大阪)・心斎橋校(大阪)・福岡校の6拠点で開校しており、これまでに3,000名以上のケアビューティストを輩出しています(2024年10月2025年4月現在)。
実践的なスキルを学ぶ現場実習のほか、卒業後の転職サポートも提供しており、学ぶだけでなくキャリアを築くためのサポートが充実しています。
介護美容研究所では、介護美容に興味を持ってくださった方を対象に、カリキュラムの内容や講座料金などの詳細を記載したパンフレットを無料でお送りしています。
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